アクション映画のスーパースター、ジャッキー・チェンが最新主演作「ライド・オン」のプロモーションのため13年ぶりに来日しました。伝説的スタントマンの姿を描いた同作は、まさにジャッキー・チェン自身の波乱万丈の人生を想起させます。
そこで、彼が自らの挫折と栄光、命がけの撮影、切ないロマンスなどについて赤裸々に記した自伝『永遠の少年』から、映画づくりに対するジャッキーの執念について語られた驚きのエピソードを紹介します!(初出:2016年1月29日)
ジャッキーの映画に出れば
家が買える?
香港を代表する映画俳優/監督。1954年香港生れ。7歳から10年間、中国戯劇学院にて京劇を学ぶ。1978年に主演した香港映画『酔拳』が大ヒットとなり日本でもジャッキー・チェンの名が知れ渡る。その後、1980年代からはハリウッドに進出し『プロジェクトA』『ポリス・ストーリー』と主演作が立て続けに大ヒットを記録。世界的な大スターの座を築き現在に至る。アクションとコメディを両立させた作風には熱狂的なファンが多い。最新の自伝『永遠の少年』が絶賛発売中!
映画を撮るときは、予算を気にしたことがない。この業界で、誰もが知っていることだ。
「ジャッキー・チェンの映画に出るときはギャラではなく、月給をもらうべきだ。撮影期間分の月給がもらえたら、もう大金持ちで、家が買える」
これは有名な話だ。香港の映画業界では、
「“大哥”の映画に1本でも出れば、家が買える」
とまで噂されている。要するにいつもものすごく時間がかかるというわけだ。『酔拳2』で、10分間の殺陣のシーンを撮るのに、3ヵ月半もかかった。1つのショットに2日をかけた。こういうことを他の誰もしない。自分でも、頭が狂っていると思う。
7日かけて1つのショットを撮ったこともある。『奇蹟/ミラクル』で、クェイ・アルイ(同作に出演した女優)の生活環境を表現するために、構想としては、移動の長回しを使って、1階から上がって4階の部屋まで行き、そこでほとんどクローズアップになるくらいに寄る。その途中には、人力車があり、1階2階では人々が食事中で、洗濯物を干している場所には鳩がとまっている。4階のクェイ・アルイの部屋に行くと、そこでクローズアップ。すべてワンショットで決める。
当時、クレーンを建てる技術は遅れていた。アメリカには専用の機材があって、これを伸ばせば100メートルにもなるから簡単だが、こっちにはそういう技術がない。したがって、いい効果がほしいなら、一から、地道にクレーンを建てねばならない。けっきょく、通り全体を借り切って、クレーンを建て、撮り終えると反対側に移して同じことをもう一度繰り返した。