国民にもバレ始めた
軽減税率「1兆円財源」の怪しさ

軽減税率導入によって空く「1兆円の大穴」をどう考えるべきか。政府答弁の論拠はあまりにも怪しい

 予算委員会で、軽減税率導入にまつわる議論がこれから本格化する。NHKが1月上旬に行った世論調査では、軽減税率について「評価する」と答えた人はおおよそ40%、「評価しない」は50%あまりであった。次第に、国民の軽減税率に対する支持率が落ちてきている。

 背景には、1兆円の財源を「選挙後に検討する」「自然増収で(つまり特別な手当てをせず)手当てする」という、安易な政権の考え方が国民にも見え始めた、という理由があると思われる。

 これから本格化する論戦について、1兆円の財源問題を中心に筆者の問題意識を改めて整理してみたい。

 まず、財源について安倍総理は「社会保障費は削減しない」(1月8日衆議院予算委員会など)という趣旨の答弁を繰り返している。一方「税・社会保障一体改革に含まれていた総合合算制度の取りやめによる4000億円は、1兆円財源としてカウントする」と自公でも合意されており、政府部内でも「新たな財源確保は6000億円」と当然のように認識されている。

 しかし、総合合算制度というのは低所得者の医療・介護などの負担に上限を設けるという低所得者対策(社会保障制度)なので、それをとりやめるということは、予定していた社会保障を削減する、ということである。したがってこれは、前述の総理の答弁と矛盾する。

 つまり、総合合算制度を取りやめることによる金額(4000億円)は、1兆円の財源にはならないのである。

 次に、自然増収論である。総理は12日の予算委員会で、「3年連続で税収増が出ている。税収増分をどう考えるか、経済財政諮問会議でも議論している」という趣旨の答弁をしている。

 続く13日の予算委員会では、「税収の上振れについては経済状況によって下振れすることもあり、基本的には安定的な恒久財源とは言えない」との政府統一見解を示した。ただ「税収増をどう考えていくかについては、経済財政諮問会議で議論していく」とも指摘した。