最大の目的は選挙対策
問答無用の税制改正
安倍政権4度目となる平成28年度税制改正は、官邸の強いリーダーシップのもとで、平成29年(2017年)4月の消費税10%引き上げ時の消費税軽減税率導入と、法人実効税率20%台(29.97%)への引き下げが行われた。
これまでの「決まらない政治」にイライラした国民から見れば、評価すべき決定と映るであろう。しかし、税制改正の中身を吟味すると、十分な議論の結果というより選挙対策の色濃い内容で、今後の予算編成や税制改革に大きな禍根を残す決定とも言える。
補正予算での年金受給者1人当たり3万円の給付や、食料品・新聞への軽減税率の適用など、どのような政策効果があるのかという議論は一切省略し、とにかく公明党への配慮・選挙対策という理由から決定された。
とりわけ税制について、これまで長年の知識・経験を兼ね備えた専門家集団である自民党税制調査会の議論をすっ飛ばしたことは、今後のわが国税制のあり方を大きく変えることになる。
自民党税調の専門家集団は、個別利害を超えた税制の理論を持ち、国家観に基づき、まがりなりにも、公平な税制とは何かを考えてきた。日々選挙民などと接する政治家の肌感覚は、官僚の論理とは異なるもので、税制は両者のバランスで形成されてきた。
今回の消費税軽減税率の導入は、それを全く根底から覆すもので、議論なしの問答無用の税制改正であったと言えよう。
税制について総理・官邸が決定権を持つことは、わが国の意思決定のあり方として、本来の姿とも言えよう。しかしそこに大きな危うさや、落とし穴を感じるのは、「議論なく問答無用」「選挙対策」という決定の流儀である。
このような現政権の手法は、将来の税制の意思決定や日本の税制に大きな禍根を残すことになるだろう。