今からおよそ10年前。人材紹介会社で仕事をしていたときに転職相談を受ける立場のキャリアアドバイザーが発したある言葉がとても印象的だったのを覚えています。

 毎日のように転職希望者と面談をしていた彼は、転職を実現させる件数、つまり転職実現で企業から得る紹介手数料の金額で人事評価が左右される立場。ですから、転職しない、転職できない人と悠長に時間を過ごすわけにはいきません。これはビジネス、社会貢献ではないからです。だからなのでしょう、

「転職経験が3回以上の希望者と面談するときは、意欲が下がる」

 とある日、私に発言してきたのです。こうした希望者は、会ったとしても転職が成功する可能性が低いと思っていたからに違いありません。それでも仕事として笑顔で対応していましたが、面談から帰ると「疲れた」と滅入るような表情を見せていました。

 ただ、転職経験がない人も別の理由で「面倒」とも話してくれました。会社を辞めたことがないので、「辞められると困るよ」と職場から引き留めにあうと、優柔不断な態度を取り始め、ついには「会社が必要としているようなので、辞めるのをやめました」と残念な判断をする人が少なくないからだそうです。だから、「転職経験が1回くらいある人を担当するのが一番いいかも…」とのことでした。

 それくらい面倒であれば、そんな条件の求職者の応募を拒否すればいいと思うかもしれません。ただ、それはできないのです。人材紹介会社には「全件受理義務」があります。つまり、企業からの求人、転職希望者からの求職の申し込みはすべて受理しなければならないことになっているからです(職業安定法第5条の5、第5条の6)。大手の人材紹介会社には膨大な求職と求人が集まります。そのすべてに対して対応など不可能。それでも転職希望者に可能な限り面談をしている立場として、思わず口から出てしまったのが先ほどの言葉だったのでしょう。