原油価格がついに20ドル台に突入した。ガソリン価格下落など消費者にとってメリットがある一方で、頭を抱えているのが石油元売り各社だ。2期連続赤字が濃厚となっている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)

石油元売り各社は製油所の運営を効率化して、収益力強化に取り組んできたが、今回の原油価格暴落はそれを吹き飛ばすほどのインパクトだ Photo by Yasuo Katatae

 石油元売り業界が、前期に続き赤字転落の悪夢にうなされている。

 その元凶は原油価格暴落による在庫評価損。石油元売り業界は、70日分の原油備蓄を国から義務付けられている。そのため、決算では備蓄している原油の在庫評価をするが、想定の原油価格より下回れば在庫評価損を計上しなければならないのだ。

 1月21日には、アジア市場の原油価格指標である中東産ドバイ原油価格は1バレル当たり23ドルまで落ち込み、約12年ぶりの安値を記録。暴落の引き金を引いたのは2015年12月に開催されたOPEC(石油輸出国機構)総会で、産油国の生産枠撤廃が決められたことに加えて、イラクやサウジアラビアが増産する方針を示したからだ。中国の景気減速による需要減もあり、供給過剰状態が続くことが確実となったのだ。

 石油元売り大手5社は、15年11月の四半期決算を発表した時点で、今期末の在庫評価損の予想額を公表。その額は5社合計で約2300億円に上っていた。

 ところが、年始からのさらなる急落で、原油価格は11月時点の想定であった同50ドル前後から20ドル台まで下落。在庫評価損の増加は避けられず、市場や業界内からは「5社で少なくとも4000億円、場合によっては4500億円近くまで在庫評価損は膨らむ」とささやかれている。

 これによって、14年度に続き15年度通期決算でも大手5社はそろって最終赤字に陥る可能性が高まっているのだ。

 一方、業界内では在庫評価損について、備蓄義務を負わされており、実際にはキャッシュアウトしないため、深刻に捉えない向きもある。だが、当然ながらバランスシートは損なわれる。中でも、大手5社で最も財務が脆弱なコスモエネルギーホールディングスは影響が大きい。

 コスモは前期末、現状とまったく同じ原油価格下落による在庫評価損から、財務体質悪化の危機にひんしていた。その危機を脱するために、調達金額の50%を資本に算入できるハイブリッドローンで600億円を調達した。今期はようやく一息ついたところだった。

 ところが、今期も最終赤字に陥れば、15年9月末時点で10.8%だった自己資本比率は、危険水域の1桁台への転落も現実味を帯びる。再び財務が悪化すれば、この1年間取り組んできた財務強化の努力は吹き飛んでしまう。