原油下落の最大要因は米国の利上げ
昨年末は“嵐の前の静けさ”だった
2016年の金融市場は大荒れでスタートし、まだその嵐は吹き止んでいない。同様に、原油相場は下落を続けており20ドル台が視野に入る状況になっている。
今回の原油価格下落の要因は複数考えられるが、最も影響が大きかったのが米国の利上げである。
下のグラフは、原油価格(ブレント)、ドル指数の推移に、リーマンショック後に始まった米国の一連の量的緩和策の期間を重ねたものだ。一見して分かるように、量的緩和が始まるとドル指数が低下し、原油価格が上昇、一連の緩和策が終了に向かうとそのタイミングでドル指数は上昇し原油価格が下落する、という関係性がある。
これが顕著になったのが、米国のテーパリング(量的緩和の縮小)が始まった一昨年の、特に夏以降だ。2014年後半の原油価格下落は、OPECの生産調整見送りや景気の先行き見通し下方修正が主な材料だった。だが、このように金融政策と併せ俯瞰して見てみると、金融政策の変更が先々の景気不安やドルの期待高を誘発し、需要減少や割高となるドル資産の売却で、原油価格に下押し圧力をかけたと考える方が自然である。
昨年12月、イエレン・FRB議長は米国の「異常な」金融政策を改めるとして漸次的な利上げ開始を決定、金利(FFレート)の誘導目標が25bp引き上げられた。正常化と言ってはいるが利上げは景気に対してブレーキを踏む行為である。影響がない訳はないし、いくら時間をかけて利上げすると言っても、現実に実施されなければ、その効果を100%経済活動が織り込むことは難しい。
今回は年明けまで市場に波乱はなかったが、昨年は比較的長いクリスマス休暇だったこともあって年末の市場参加者が限定され、さらに大きなイベントがなかったため、たまたま静かな年越しとなった、と考えるのが妥当だろう。しかし、年末年始に発表された中国の経済統計の鈍化や、中東での地政学的リスクの高まりが火付け役となり、株価が暴落。利上げの影響と相まってエネルギー需要の減少観測が強まったため、原油価格にはマイナスの圧力が作用した。