1~3月に2000台/日と高い生産台数を予定していたプリウス。3月中の挽回は厳しく、決算期をまたぐ可能性が高い Photo by Mitsufumi Ikeda

 生産停止に追い込まれたのは、事故発生から約3週間も後のことだった。トヨタ自動車は2月1日、国内の完成車工場の稼働を8~13日の6日間、全て停止すると発表した。

 きっかけはトヨタ系鉄鋼メーカー、愛知製鋼で今年1月8日に起こった爆発事故。エンジンやトランスミッション(変速機)など駆動系部品に使う特殊鋼や加工部品の供給が滞っているのだ。

 ただ当初は、「エンジン構成部品の一部の供給が滞るだけで、対象車種も限定的と聞いていた」(部品大手首脳)。実際、特に2次サプライヤー以下のメーカーにはトヨタから調査依頼もなかったという。

 風向きが変わってきたのは事故から約1週間後。「新型『プリウス』を減産しなければならないらしい」。そんな話を耳にした部品各社が慌て始めたころだ。

 ただでさえ1~3月は決算期末前とあって、全車種で2000台/日ほど通常より上乗せし、約1万4000台/日を部品各社に内示していた増産シーズン。その上、発売間もない人気のプリウスも増産すべく、部品各社は派遣社員なども増員して3月までは乗り切ろうと手配を終えたばかりだ。それが突如、減産で計画通りにいかないとなれば、部品各社には休業補償などの負担がのしかかる。

 ところがふたを開けてみれば、プリウスを造る堤工場(愛知県豊田市)の減産どころか、国内の全工場に加えてグループの日野自動車やダイハツ工業でも生産を停止するというから「寝耳に水」(系列メーカー幹部)だったようだ。

「どこまで特殊鋼を使っているのか、把握できていない部分があった」(トヨタ幹部)。結果的には、ほぼ全ての車種で使っていたことが明らかになったというわけだ。