「緊急事態」への対応なき憲法改正論
問われる安全保障への根本姿勢

 ところで安倍首相は、この夏の参議院選挙で宿願の憲法改正の是非を国民に問う意思を明らかにした。ここにおいて、本命の9条改正に先立って、いわゆる“お試し改憲”としての「緊急事態条項」の導入が大きな焦点となっている。

 2012年の自民党憲法改正草案の第98条は、「内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる」と規定する。さらに99条の1項では、緊急事態宣言を受けて「内閣は法律と同一の効果を有する政令を定めることができる」とされ、同条3項では、この事態において「何人も、……国その他公の機関の指示に従わなければならない」と規定される。 

 この「緊急事態条項」については、それが基本的人権を抑圧し立憲主義を崩すものであるとの批判が高まっている。ただそれ以前の問題として、上に見てきたように、「我が国に対する外部からの武力攻撃」の可能性さえ孕んだ今回の北朝鮮によるミサイル発射への安倍政権の対応に示される、安全保障への根本姿勢が問われなければならない。

 そもそも安全保障の大前提は、安倍首相自身が繰り返し強調するように、「いかなる最悪事態」にも備えをおろそかにしないことにある。とすれば、北朝鮮による稼働中の原発へのミサイル攻撃という「未曽有の緊急事態」を想定して、なぜ具体的な対応策をとろうとしないのであろうか。

 ミサイル攻撃に対する迎撃態勢を整えるばかりではなく、攻撃がなされ原発が爆発してフクシマを越える大規模な放射能汚染が広がった場合に備えて、基本的な対応マニュアルが策定され、住民の避難訓練が実施されねばならない。

 安倍政権は、沖縄の辺野古での新基地建設問題をめぐり「外交・防衛は国の専管事項」との主張を繰り返している。仮に「専管事項」であるならば、当然のことながら、国民の生命と安全を守るために重大な責任を負わねばならない。しかし現実には、すでに指摘してきたように、いかなる対応策もとられず放置されているのである。