実際、勤務医の4割が1週間60時間以上の労働をしているが、これは一般的に考えると残業が120時間で、過労死認定基準を超えた労働時間となる。また、宿直をした翌日も86.2%が通常通りに勤務しており、勤務医の過酷な労働環境が伺えるのだ(独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の4割が週60時間以上の労働 ~『勤務医の就労実態と意識に関する調査』調査結果~」より)。

 今は、大手メディアではほとんど報道されなくなり、「医療崩壊」という言葉も聞かれなくなったが、世間がその言葉を忘れただけで、勤務医の労働環境が根本的に改善されたわけではない。

 今日もどこかで、36時間勤務の疲れきった医師が患者の診療に当たっている。病院医療は制度的な保証ではなく、「現場医師のがんばり」という非常に脆いものの上に成り立っている面が大きいのだ。

 すでに医療現場が限界にきているところに加えて、目前に迫っているのが2025年問題だ。団塊の世代が75歳以上になると、医療を必要とする人が今まで以上に増え、病院のベッド数が足りなくなることが予想されている。

 そこで国が目指しているのが、「大病院は専門性の高い手術や抗がん剤の治療」「診療所や中小病院は慢性期の治療や日常的な健康管理」などと医療機関が役割分担をして、病院完結型の医療から、地域全体で患者を治し支える医療への転換だ。

 国民にも医療機関の利用方法を見直してもらう必要があるため、その対策として導入されたのが、4月から始まる紹介状なしで大病院を受診した患者への特別料金の義務化だったのだ。

特別料金による患者誘導に
大きな効果があるかは疑問

 こうした特別料金の導入は、今回がはじめてではない。すでに入院用のベッド数が200床以上の病院では、紹介状なしで受診した患者から特別料金を徴収してもよいことになっている。だが、特別料金を加算していた病院は、初診時45%と半数に満たなかった。

 さらに、2013年4月からは「低紹介初・再診料」という制度も導入された。高度な医療が必要ないのに患者の自己都合で通ってくる患者が多い大病院の初再診料を引き下げ、その分、患者に特別料金を請求するという制度だ。

 だが、この仕組みも患者を誘導する大きな手立てにはならず、今もまだ大病院の通院患者のうち6~8割は紹介状を持たずに受診している。