2015年の世界自動車販売に見る
「新ビッグ3」覇権争いの構図
2015年のクルマ世界販売が出揃うなか、トップ3は日本のトヨタ自動車が4年連続の首位、2位にドイツのフォルクスワーゲン(VW)、3位に米国のゼネラル・モーターズ(GM)となった。世界の自動車ビッグ3の座はここへきて日本、ドイツ、米国を代表する自動車メーカーで固まる一方で、そのトップ争いが拮抗する流れを示している。
トヨタは、4年連続の首位を堅持しグローバルで1015万台を販売したが、2位のVWが993万台、3位のGMが984万台と、約30万台の差でいずれも1000万台に迫るグローバル販売を示し、「新ビッグ3」によるトップ争いの流れを見せてきている。
20世紀の世界自動車産業をリードしたのは、米国のゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、クライスラーだった。米ビッグ3と呼ばれたこの3社は、イコール世界のビッグ3でもあり、世界の自動車産業のリーダーだった。しかし、米国勢はリーマンショック前から業績に変調をきたしていたがリーマンショックで経営危機に陥り「ビッグ3」の座から陥落していった。
米国勢に代わって世界販売を伸ばしたのが、トヨタとVWだ。トヨタは2000年代初めにグローバル攻勢を強めて伸ばしたが、リーマンショックで一時赤字転落し、立て直しを進めての世界トップを維持している。一方のVWは、この機に明確に「世界覇権」を狙ってグループ力の強化を一気に進めてきた。
これにより、世界の自動車覇権争いはトヨタとVWが競り合い、両社が「ビッグ2」と言われたが、ここへきてGMの復権が目覚ましく、覇権争いの一角に食い込むこととなり、勢力図は再び「ビッグ3」の様相を呈してきた。
しかし、VWは排ガス不正問題でつまずき、昨年後半に失速するという「自滅」を演じた。その影響もあって、昨年の販売は1000万台に届かず、さらに本年以降もその余波が販売に不透明さをもたらしている。それに対してトヨタは、かつてのグローバル拡大戦略の反省に立って、グループ内を固める姿勢を見せている。GMは、米オバマ政府の救済策によって経営危機から立ち直ってきたが、本物の復権はこれからと見る。
世界の自動車「新ビッグ3」は日米欧の代表選手が顔をそろえる陣容になったが、それぞれがお家事情を抱えており、かつてのビッグ3のように、圧倒的に世界をリードする力を持つ構図には至っていないのが実情である。
その意味では、世界経済全体の不透明さ、中国経済の減速や原油の動向に加え、次世代車のエコカーや自動運転への開発動向に目を向けると、今後世界をリードする代表選手は誰なのか、混沌とした状態に見える。