今回は、60歳近くになりながらも、三十数年前の学歴を持ち出し、周囲をこき下ろす高学歴な社会保険労務士(以降「社労士」と記述)の男性を紹介したい。
筆者はこの男性と取材を通じて知り合い、以降、何度か会ったことがある。その過程で、彼を取り巻く社労士仲間や取引先の関係者数人とも知り合いになった。以降、この男性(本稿ではA氏と記述)に関わる関係者の「噂」が筆者の耳に度々届くようになった。
前述のようなキャラクターを持つA氏を「学歴病」と言ってしまえばそれまでだが、実は多くの人が程度の違いはあれ、かかっている病ではなかろうか。その背景に見えるのは、「時代の転換期についていけない人々」というキーワードである。今回はこの男性の言動から、学歴病の深層に迫りたい。
高学歴の社労士に見える
「人間の弱さ」の象徴
社労士のA氏は早稲田大学第一文学部卒で、現在50代半ば。取引先の関係者をはじめ、周囲のあらゆる者を批判し、否定するのが癖になっている。
「あんな社長では、ダメだろうね。労基法すら知らないから……(笑)」「そんな社員は権利意識の塊であり、何をしても上手くいかない……(笑)」
筆者がA氏と直接合ったときに感じたこと、そして周囲の関係者が口にする評価をまとめると、次のようになる。
自尊心の高いA氏は、世間が自分を軽く扱うことに怒り、不満を持っている。自分をひとかどの者と信じ込んでいる。学歴を持ち出すと、自らの実績や力量を覆い隠すことができると思い込んでいるフシもある。ところが周囲のほとんどの人は、「冴えない社労士」としか見ていない。そこに、克服しがたいギャップが生じ、喘いでいる――。
A氏が会社員や会社の経営者、労働組合役員などを「労働法の知識がない」とバカにするのは、その劣等感を克服するためだろう。ときには、「中小企業の経営者や社員には学歴が低い人が目立つ」と口にすることがある。さらには同業の社労士を「短大卒では……」「〇〇大卒では……」とこき下ろすこともある。それを聞いた周囲の人々は誰も笑わないのに、1人で笑っている。その時間は15~30秒に及ぶという。