多くの会社員が疑心暗鬼に陥る
「学歴と出世」の因果関係
今回は、企業(とりわけ大企業)の新卒採用や昇格に、学歴がどのように関わっているかを炙り出したい。
偏差値の高い大学を出た社員が口にする疑問に、「いい大学を出ているのに、出世できない」というものがある。筆者はこれまでの取材で、そうした悩みを打ち明ける多くの会社員に出会ってきた。
社員の疑心暗鬼は、「学歴病」を根付かせることになりかねない。その背景にある人事評価システムを検証し、場合によっては見直し、社員に納得感を与えてやる気にさせることは、企業にとって重要なテーマとも言える。
世の中の企業は学歴と出世について、どんな考えを持っているのだろうか。筆者の取材経験から言うと、企業の人事関係者にそのことをヒアリングしても、タテマエ論しか話してもらえないことがほとんどであり、実態は判然としない。
そこで今回は、人事コンサルタントとして30年以上のキャリアを持つ林明文氏(コンサルティング会社・トランスラクチャ代表取締役)に取材を試み、その意見を紹介したい。多くの大企業、中堅、ベンチャーと関わってきたコンサルタントの客観的な目を通じて、企業のタイプ別に、学歴と出世の因果関係やその課題について考察する(ちなみに林氏は、連載第2回でも意見を述べてくれた)。
まず筆者は、林氏に大企業で働く2人の男性社員の話をした。彼らのケースを通じて、林氏と認識を共有したかったためだ。2人はここ1年の間に取材で接した人たちだ。2人を仮にA氏とB氏とする。A氏が勤める会社は、学歴を重視しない実力主義の会社、B氏が勤める会社は学歴と出世が連動している会社のように見受けられる。そこで働く社員の学歴に対する価値観は、どう違うのだろうか。
まずは2人のプロフィールを紹介しよう。