醸しだすだけで盲従してしまう
「権威」
人は、権威のある人間からの指示には盲信的に従ってしまいやすいという性向もあります。これも使いようによっては相手を好きなように動かしうる武器となります。
たとえば、私が何かしらのセミナーに登壇して、最初に「皆さん。まずは何も考えずに1分目を瞑ってください」と言ったとします。ほとんどの聴衆はそれに従います。
30秒ほどたったところで、「皆さん、なぜこんなに無駄な時間を過ごしているのですか?」と問うと、皆きょとんとした顔をします。
「だって、そうするように言ったじゃないですか」というのが彼らの答えです。
つまり、本質的には何の意味がなくとも、講演者という「権威」の言葉に皆が無意識に服従してしまったのです。
権威は、実際に実力やそれに伴う肩書があれば非常に効果的ですが、時にはそうした実力や肩書がなくても、別のシンボルがその役割を果たすことがあります。
その1つは外見です。たとえば研究室の中における白衣という外見は、権威の象徴として非常に有効です。ファッション店の販売員がオシャレな服を着ていると顧客に対して説得力が増すのも同様です。
もう1つは身にまとうアイテムです。交渉相手先の社長が立派な腕時計をしていれば、やはりそこから成功者であるというニュアンスが伝わってくるのです。
これらは非常に単純なもので、後で指摘されると「ああそう言えば」なるようなものですが、いざ渦中にいると、なかなか気がつきにくく、容易に流されてしまいやすいのです。
今回紹介した代表的な影響力の武器は、自分が用いるという点もさることながら、他人に仕掛けられたときにそれをうまく防ぐという観点が非常に重要です。ビジネスリーダーになろうとするのであれば、こうした知識は基本中の基本として押さえておきたいものです。