孫子からクリステンセンまで、3000年に及ぶ古今東西の戦略エッセンスをまとめた書籍『戦略の教室』から、特に有名な10の戦略を紹介する連載。第3回は経営からマーケティング、営業活動まで応用される『ランチェスター戦略』。軍事研究から生まれた「弱者の戦略」「強者の戦略」とは?

なぜ、秀吉は30万の兵を率いて小田原征伐をしたのか?

軍事作戦に応用された、イギリスのエンジニアの数理モデル

 思わぬところで、別の分野の知識や発明が大きな影響を及ぼすことがあります。日本ではビジネスの経営戦略の一つとして知られる「ランチェスターの法則」は、本来は軍事的な研究から派生した理論です。

 独創的な技術者だったイギリスのフレデリック・ランチェスターは、自動車製造販売の事業を売却したのち、航空工学の研究を重ねる過程で、1914年に「ランチェスターの法則」という数理モデルを発表します。

 彼の発表した法則は、第二次世界大戦中に連合国側で軍事作戦や攻撃効果の分析と決定に応用され、大きな成果をあげました。約100年前に発表されたこの法則は、主に軍事的な分析に使われてきたのですが、現代の日本では、マーケティングや営業戦略としてビジネスマンが活用しています。ランチェスター本人は、このような未来は想像もしなかったのではないでしょうか。