スーパーチューズデー前日にボストン郊外で行われたサンダース氏の支持者の集会。若者の姿が目立ち、元気な掛け声が飛び交った Photo by Wakako Otsubo

「トランプに投票したよ。民主党政権で金持ちはもっと金持ちになった。でも自分の稼業には全然恩恵がない」

 3月上旬に行われた米大統領選予備選挙の投票所で、40代の男性はそう打ち明けた。2月から本格化している米大統領選は、共和党のトランプ氏や民主党のサンダース氏といった本命ではなかった候補が躍進している。中間層や若者の不満を代弁する彼らの躍進は、好調に見える米経済が決して盤石ではないことを物語っている。

 2月の雇用統計は、非農業部門の新規就業者数が24万2000人増加し、失業率は4.9%と8年ぶりの低水準となった。数字上は、雇用は底堅い。だが、ここに落とし穴がある。

 石原哲夫・米国みずほ証券USマクロストラテジストは、「就業者数を16歳以上の人口で割った就業者比率は、リーマンショック前の水準に回復していない」と指摘する。失業率は、はなから就職を諦め求職活動をしない人が増えれば数字上は改善してしまう。

 米国のメディアでは、「大卒バリスタ」という言葉がしばしば見られるようになった。大学を卒業しても、大卒の資格が要求されないコーヒーチェーンぐらいしか職が見つからないのだという。雇用の受け皿もレストランなどのウエーターや介護、建設など、生産性の低いサービス業が中心だ。「授業料無料」などを訴えるサンダース氏の支持者には若者が多い。