マイナス金利の目的は、企業の投資を増加させることだとされている。果たして、そのような効果があるのだろうか?以下では、法人企業統計に基づき、日本企業の投資行動を調べ、そうした効果があるかどうかを検討する。
マイナス金利は、企業の現金・預金保有や、金融機関からの借り入れ返済には影響を与えるだろうが、設備投資に影響を与えるとは考えられない。そうなると、余った資金が不動産に向かう。三大都市圏商業地の公示地価は2.9%の上昇になった。不動産バブルが生じる危険がある。
マイナス金利は
企業の資金調達と使用にどう影響するのか
この問題を考えるため、企業の資金調達と使用に関する会計的な関係式から出発することとする。
ある期間について、つぎの均等式が成り立つ。
税引き後純利益+減価償却+金融機関からの借入金の増+社債・株式の増=配当+グロスの設備投資+土地購入+金融資産の増…………(1)
以下では、つぎの項目のみを取り上げることとする(配当、税引き後純利益は、法人企業統計長期時系列の四半期データでは得られないため、前者は無視し、後者は利益剰余金の対前期比増で代理させる)。
・金融機関借入金(流動負債と固定負債)
・利益剰余金の対前期比増
・減価償却費
・設備投資(当期末新設固定資産合計)
・土地購入(当期末譲受固定資産)
・現金・預金の対前期比増
これらの推移を示すと、図表1のとおりである。
(1)の関係式のうち図表1では取り上げていない項目があるので、調達と使用は完全には一致しないが、ほぼ一致している。つまり、ここで取り上げていない項目を無視しても、大きな誤差は生じないと考えられる。そこで、以下では、ここで取り上げた項目だけについて分析を進めることとする。
2014年頃から、四半期ベースで、設備投資が10兆円程度、減価償却費が8兆円程度、現金・預金増が5兆円程度、土地取得が1~2兆円程度だった。
◆図表1:資金の調達と使用
(資料)法人企業統計