名前を名乗らず、人相も悪い人がいきなり会社にやって来たら、どうするか。
誰もがうろたえるだろう。
連載24回目は、社内で起きた労働問題を解決するために、社外の労働組合の役員と思われる男が突然、現れたところから始まる物語である。社外の労組によるこのような干渉は、かつて警察に通報した会社があるほど、波紋を呼ぶものだ。
しかし、筆者が取材をすると、その後、労使間で事態の解決に向けて大きな前進があった形跡はない。つまり、社外の労組やそこへ駆け込んだ社員(組合員)にとって、これは「空しい威嚇」に終わる可能性が高いのである。
今回は、主に舞台となった会社の経営側の方々にお話をうかがった。あなたの職場にも、このような社員がいないだろうか?
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■今回の主人公――はい上がれない「負け組社員」
木村良美(仮名・34歳)
大手銀行系のファイナンス会社(社員数2500人ほど)の業務推進部で正社員として働く。5年近く前に中途採用試験を経て入社。上司の女性と仕事の進め方などを
めぐり、何度かぶつかる。次第に2人はこう着状態に陥っていく。
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(※プライバシー保護の観点から、この記事は取材した情報を一部デフォルメしています)
名乗らない「招かれざる客」の正体は?
うろたえる人事マンと受付係の運命
人事部の有賀和裕(39歳)の電話が鳴った。1ヵ月ほど前に課長補佐になったばかりだ。電話の主は、受付の坂元かおりからだった。その声はうわずっている。
有賀は管理職としての威厳を示そうと、意識して冷静に対応した。