3月以降、中国の人民元相場安定化や欧州中央銀行(ECB)の追加緩和、米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げ見送りなど、市場混乱回避への努力から世界的に株価の持ち直し基調がはっきりとしつつある。
確かに中国当局は人民元を高めに誘導することで、金融市場の安定化に成功しているように見える。しかし、中国景気悪化の要因は割高な人民元だ。意図的に通貨高に誘導したところで景気刺激策を打っても、持続的な景気回復が覚束ないことは日本経済が実証済みだ。
また、FRBのハト派色が強まると円高圧力が強まりやすいため、日本株は他市場に比して回復に手間取ってしまう。日本株が他市場を凌駕するには、やはりFRBが利上げスタンスを崩さないことが必要だ。しかし、反対にFRBが追加利上げを急ぐと、新興国や国際商品市場から資金が再び流出する恐れがある。現在の世界的なリスクオンは「砂上の楼閣」のようなものであろう。
そうした中、投資家は欧州金融機関の信用不安の火種というテールリスクを忘れてはいないだろうか。3月10日、ECBは月間の資産購入額の増額や中銀預金金利の引き下げに加え、リファイナンス金利や限界貸出金利も引き下げた。さらにユーロ圏内の金融機関以外の企業が発行する投資適格級ユーロ建て債券を買い入れ対象に追加し、新たな資金供給手段としても導入するなど、百点満点の追加緩和パッケージを打ち出した。