これまでこの連載でお伝えしてきた「戦略人事が具体的に行うべき9つのこと」の中から、今回は(8)「勝つためのカルチャーをつくる」と、(9)「エンゲージメントを促す」について、解説します。
行動することで勝つカルチャーができる
「勝つためのカルチャーをつくる」ということは、ずばり、「価値観を共有」することです。
「この会社の価値観は、こういう考え方に基づいて作られており、それをみんなが実行しなくてはいけない」ということをはっきり伝え、全社員で共有することが、勝つためのカルチャーを作ることになります。
ちなみにLIXILでは、以下の5つの「VALUE」が共有すべき価値観です。
自己主張ばかりするのではなく、周囲を尊重しながら働くということ。それと同時に、結果に対する責任を持つこと。品質を念頭に置いて仕事をすること。儲かるからと言ってお客様を騙すようなことは、絶対してはいけない。常に情熱を持って仕事をし、ビジネスの面でも人的な面でも絶えず成長を狙う。
こうした考え方をグループ全社員が共有することで、勝つためのカルチャーを作ろうとするものです。
「カルチャーは、長年培われた風土だから変えられない」という人もいますが、私は、たとえ従業員が10万人であっても、カルチャーを変えられないわけがないと思っています。
多くの会社でカルチャーが変えられないのは、立派な理念を掲げながら、それを実行していないからです。
企業の理念や行動指針は、どこもみんな似ていますが、違いは、それをきちんとやるかやらないかです。
理念の唱和に意味はない
理念の共有というと、これを唱和する企業があります。
当社でも、私が入った当初、VALUEを唱和していましたが、私は単純な唱和は止めるように言いました。VALUEは読み上げることで徹底するわけではなく、むしろ読むということの繰り返しで形骸化してしまうのです。
VALUEは、「こういうやり方をしたら勝つ」という“戦略”であり、全員が守るべきPrinciple(原則)です。どこかから持ってきてまとめたきれいごとは、戦略でも何でもありません。戦略ですから、実行しなければ意味がない。それをきちんと実施するための方策が必要になるのです。