企業を取り巻く競争環境は、かつてなく変化のスピードを速めている。もはや従来型の戦略策定で企業が勝ち残ることは難しい。戦略を立てることにも「戦略」が必要な時代になったのだ。そこで、世界屈指の経営コンサルティング・ファーム、ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、事業環境の特性に関わる3つの軸によって分類できる5つの環境タイプと、それぞれに応じた戦略アプローチで構成される「戦略パレット」を考案。その考え方を書籍『戦略にこそ「戦略」が必要だ』にまとめ、経営者が適切な戦略アプローチを選び、それを実行する方法をレクチャーしている。同戦略コンセプトの考案を主導したマーティン・リーブス/ボストンコンサルティンググループ シニア・パートナーが、ポイントを語る。

かつてなく厳しい環境では
戦略を選ぶ「戦略」が必要だ

もはや企業は、従来型の経営戦略では生き残れなくなった。戦略を選ぶための「戦略」が必要となる

 現在、企業を取り巻く競争環境は厳しさを増しています。企業はよりよい競争戦略を選択し、考えられ得る中で最大の成果を上げ続けないと、勝ち残ることが難しくなりました。

 しかし、不確実性の高まりゆえに、多くの業界で策定した戦略やその実行の仕方が環境に適合しないケースが増え、キャッシュフローが潤沢な企業とそうでない企業との差が拡大しています。また、企業のライフサイクルのステージの移行も早くなっています。勝てる戦略アプローチを企業が選択することは、従来にも増して難しくなっているのです。

 不確実性の背景には、今やほとんどの企業が、変化のスピードが激しく複雑性が増す事業環境の中で戦っている現状があります。今後企業は、1つの競争戦略だけでなく、多様なビジネス領域や事業部門、事業プロセスのそれぞれに対して、適切な戦略アプローチを適用し、かつ機動的に見直していかなくてはいけません。

Martin Reeves(マーティン・リーブス)
ボストン コンサルティング グループ(BCG)ニューヨーク・オフィス シニア・パートナー&マネージング・ディレクター。BCGブルース・ヘンダーソン研究所所長。東京オフィスにも8年間在籍し、ヘルスケアを中心とする多国籍企業に対して様々な戦略策定・実行を支援した。2008年よりBCGフェローとして、クライアントサービスと調査研究のバランスを保ちつつ、戦略に関わる数多くの論文執筆や講演を行っている。

 かつて経営学者のマイケル・ポーターは、「戦略は頻繁に変わってはいけない」と唱えました。今、BCGで活躍している多くのコンサルタントも、かつてはそう学んできました。しかしもはや、「持続可能な戦略」を策定できる領域は少なくなってきています。世の中の変化のスピードがあまりにも速くなっているため、企業がプランニング(事業計画の立案)をしても、1ヵ月も経てば事業環境が様変わりしてしまうからです。従来、多くの企業は中期経営計画を重視してきましたが、旧来型の中計は無用の長物になりつつあります。

 企業が置かれている環境によっては、よく言われているブルーオーシャン戦略(未開拓市場の開拓)やオープンイノベーション戦略(自社以外との広い連携による革新)が有効なケースもあるでしょう。ただ、戦略を立てることはそれほどシンプルな話ではなくなり、非常に多くのフレームワークが発表されています。企業が勝ち残るためには、「戦略を立てるための戦略」が必要になっているのです。