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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

オバマ大統領とシュワルツェネッガー知事に学ぶ!
ねじれ国会こそ政治家一人ひとりの見識を示す好機

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第34回】 2010年7月29日
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 米国は先進国の中で国民皆保険制度を持たない唯一の国である。健康保険は民間の保険会社が運営しているが、健康保険料が高いために3200万人のアメリカ人が保険に加入できないでいる。今回の医療改革法で国民が誰でも健康保険に加入できるようにした歴史的意義は極めて大きい。日本の常識では考えられないことであるが、歴代の大統領が何度も挑戦して実現できずにきた難問中の難問の政治課題であった。

 オバマ大統領はもう一つの難問に挑戦した。それは金融改革法案である。サブプライム問題から発生してリーマンショックに至ったアメリカ発の金融不安を今後二度と起こさないようにする金融規制法である。規制される側にはゴールドマン・サックス、JPモルガン等の大銀行が控えており、彼らの強力なロビー活動に抵抗しながらも、上下院の委員会でいくつもの修正案を経て審議されてきた重要法案であった。この春から議論は収束の方向にあった。下院は6月に賛成票237票、反対票192票の大差で可決した。

 問題は上院であった。当初法案は修正に次ぐ修正でかなり緩やかな規制になったために、民主党の上院議員の中から規制が緩過ぎるとして反対に回る議員が1名出てきた。ところが共和党の中にはマイナーな修正を認めてくれるのなら賛成に回ってもよいとする共和党議員が3名現われた。これによって金融改革法案は今月中に可決され、法律となるのが確実になった。オバマ大統領の粘り腰によってついに超党派での本案が成立した。

 こうした米国の事情を見ていると、日本でも譲るところは譲って超党派で法案を成立させることは不可能ではないような気がする。党の決めた方針に沿って党員が一致団結して行動することをParty Lineと呼ぶが、これではどこまで行っても「数」の暴力しか残らない。

 米国の州の中には、党の殻を崩す動きも出てきている。その例がカリフォルニア州である。

 カリフォルニア州では州知事や上院議員を選ぶときに、まずは共和党と民主党それぞれが党大会(予備選挙)を開き、本選挙に臨む候補者を選出して、本選挙で両党の候補者が一騎打ちで競い合う。この制度では共和党・民主党以外から本選挙でいきなり候補者を出して本選挙で勝ち抜くことは難しい。有権者の価値観が多様化する中で、二大政党制を基盤にした現在の選挙制度は住民の支持を失いつつある。

 実際の議案の審議についても二大政党の弊害が指摘されてきた。党選出議員はそれぞれの党の主義・主張に従って行動するので、具体的な議案で実質的な討論をすることが少なく、多くの議案が「たなざらし」にされてしまうのである。小さな政府・規制の少ない自由資本主義を主張する共和党は、大きな政府に結び付く議案や、新たな規制導入となる議案には最初から反対し、最後まで反対を貫くのである。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

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シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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