英国の離脱とEU崩壊で始まる大混乱
利害調整が困難な“多極型”世界構造

 国民からの不満が高まると、政治としても何らかの手立てを講じざるを得ない。国民の不満を放置しておいては、基本的に選挙に勝つことができず、政治家の地位も危うくなる。

 欧州諸国の政治情勢を見ると、その兆候が見え始めている。フランスではテロ事件の発生以降、極右政党が勢いを増している。ドイツでの地方選挙の結果を見ると、メルケル首相に対する支持率に陰りが出始めている。そうした兆候は、他の欧州諸国にも見られる。

 その意味で、6月23日の英国の国民投票は重要だ。英国民のEUに対するNOが、長い目で見ると、EU崩壊のスタートになる可能性は高い。仮に、EUの結束にひびが入ると、世界の実体経済や金融市場には大きな波が押し寄せることになる。

 EU崩壊の可能性が高まると、まず通貨ユーロに対する信認が低下するだろう。ひょっとすると将来なくなるかもしれない通貨を、保有したいと考える投資家は少ないはずだ。ユーロの価値が不安定化すれば、中長期的に加盟国の経済にもマイナスの影響が出る可能性が高い。

 大きな規模を誇る欧州圏経済が低迷すると、世界経済の足を引っ張ることになる。そうなると、世界的に株式市場の動きは不安定になり大きな混乱が発生する可能性が高い。それと同時に、為替市場も大きく揺れるはずだ。

 問題は、そうしたリスクに対応できる世界的な協調体制ができるか否かだ。既に米国にはかつてのような圧倒的な発言力はない。中国が経済的に台頭し安全保障面でもその存在感を高め、ロシアもプーチン大統領の下で対米国の存在感を高めている。

 世界の権力構造が米国一国中心型から、いくつかの極を持つ“多極型”に変質している。そうした状況下、主要国の複雑な利害調整を行うことは至難の業と言わざるを得ない。