保育園問題から考える
「働くママ」たちの苦労
「保育園落ちた日本死ね!!!」
この匿名ブログに端を発した待機児童の問題は、保育士の過酷な労働環境におおよそ賃金が見合っていないという現実をも浮き彫りにした。
夏の参院選を前に好イメージを印象づけたい安倍政権は、「保育士の賃金4%増」という“付け焼き刃”感が否めない急造案を提示したが、この数値設定自体が、成長戦略の中で重要なポジションに位置づけられているはずの「女性活躍推進」を、彼らが根本から理解していないのではないかという疑問をも噴出させる。
保育士のなかには、月ベースの賃金が手取り15万円程度で激務をこなす人たちも多い。それを考えると、安倍政権の言う「4%」とは、月6000円になるかならないかの微々たる数字だ。これは、子どもを預ける先に給食費でも支払えば、尽きてしまう程度の金額なのだ。これを抜本的な保育士不足の改善に結びつくと考えられる人が、どれだけいるだろうか。
また、野党は野党で「保育士の賃金月5万円増」などという対抗策を示したが、あの民主党政権時代にマニフェストに掲げながら、ただの一度も「公約」の金額を支給できなかった悪名高い「子ども手当て」の失敗があるだけに、これもにわかに信じがたい。再びそれで騙されるのは「ゴメン」である。
「業を煮やした『働くママ』がとうとう声を挙げ始めた……そのような認識ではこの問題の根治には決してならないんです」
こう指摘するのは、大阪国際大学准教授の谷口真由美氏(41)だ。
「これが『女性の問題』であると考える男性たちには、まず意識を変えてもらいたい。子育てしながら働くことの苦労に関する問題が、母親だけのものだとすれば、それは『性的役割分業』=『子育ては女の役目だ』という男性上位の考え方です。女性たちが直面する問題を、少しでも考える勇気が男性にあるならば、これを『男性の問題』でもあると捉えてほしい」
経済産業省は3月、「ダイバーシティ」(=多様性の実現)を推進・実行する全国企業34社を「新・ダイバーシティ経営企業100選」として選出・表彰した。そのなかには、まさに多様性を示す数々のユニークな経営手法で注目すべき企業が、経営規模の大小にかかわらずある。まずは「女性の活躍」を視点に、そのいくつかの企業の横顔と取り組みを見てみよう。