経済政策とは「医療」のようなものだ

 2017年4月に予定されている消費税引き上げの延期を望む声がある。しかし、それこそ、かえって日本経済をさらに悪化させる可能性が高い。財政の更なる悪化はいうまでもないが、国民の前向きかつ真面目な気持ちを弱めてしまうだろう。病気の治療と一緒で、逆に危機感を自覚し、改革への動機付けをし、さらに成長に転ずる「危機バネ」を活用することこそが、現在必要な戦略と考える。

 筆者は経済政策の考え方は“医療”のようなものだと考えている。健康体で生活しているときには日々の生活習慣について心掛けるだけでよいが、病気になったときには治療が必要となる。苦い薬を飲み、痛い手術を受けなければならない。良薬、口に苦しなのだ。病気になったときに何も変えずに放置して生活すると、さらに病気(病巣)は悪化する。

 日本経済が、病気で体力が落ちている状況なのは疑いの無いところであろう。しかも、現在、国民が全ての“痛み”や“苦さ”を避けたがる傾向がある。リスクを取った痛い手術などはもってのほか、というわけだ。これでは、まず病気は治らない。

日本の「病状」はかなり悪い

 日本の財政赤字は現在、ダントツの世界一である。しかも、まだまだ増えており、概数で申し上げるが当面年40~45兆円ペースで増加する。最近の国の歳出・歳入は、歳出が95兆円(今年度予算はさらに膨れ98兆円)、税収が50兆円(同じく景気がやや回復したことから増加して55兆円)。差額の赤字分45兆円は、新発国債などで資金を集めるしかない。

 これはたとえば月給50万円の会社員が毎月95万円使うようなものだ。しかも何年もそれを続けている。いろいろ事情はあるだろうが、通常の感覚ならば明らかにおかしいと思うのではないか。おかしいと思わない方がおかしい。自分の部下や子供だったら、きっと注意したくなるであろう。

 財政赤字は借金である。一部に「資産があるから問題ない」と考え、問題視しない向きもある。しかし企業・個人の場合、借金が何年も続けてどんどん増えていく企業・個人はどうなのか、ということだ。たとえば銀行員であったら、追加貸出に対して不安に思うのではないか。まず、借金は返すべきなのである。