『告白』『悪人』『モテキ』『バケモノの子』『バクマン。』などを手がけた映画プロデューサーで、初めて書いた小説『世界から猫が消えたなら』が120万部を突破し映画化。2016年も映画『怒り』『何者』など、次々と繰り出される企画が話題を集める川村元気。その背景にあるのは「“苦手を学ぶ”ことで、人間はぎりぎり成長できる」という一貫した姿勢だという。
そんな川村元気が、話題の新刊『理系に学ぶ。』では、「文系はこれから何をしたらいいのか?」をテーマに最先端の理系人15人と、サイエンスとテクノロジーがもたらす世界の変化と未来を語っている。
本連載ではその中から5人との対談をピックアップするが、第6、7回では、数々の傑作で世界を熱狂させてきたゲームプロデューサーの宮本 茂さんにご登場いただく。

ゲームと映画の違いとは?

川村 宮本さんが作られてきたゲームの大ファンです。
宮本 川村さんは映画プロデューサーなので『ピクミン ショートムービー』の話をすればいいのかなと思ってましたが、だったら、しっかりしゃべらなあかん(笑)。

川村 その『ピクミン ショートムービー』ですが、3D上映で拝見しました。宮本さんはゲームのキャラクターに、ストーリーを付けることをかたくなにやらないできたように感じていたので、映画を作ると聞いて正直、意外ではありました。
宮本 確かに「ゲームと映画は違うんです」と言い続けてきたんですが、ピクミンはちょっと特殊で、お話にしてみたくなったんです。それに従来のように手描きのアニメーションや実写となるとどうしてもゲームの世界とギャップが出てきてしまいますけど、CGの時代になってそこのズレがなくなって、映画のためのキャラクターの監修が要らなくなったのが大きいですね。

川村 今回は脚本も書かれたんですか?
宮本 尺的に脚本というほど複雑な構成ではないので、まずは僕が「うごメモ」(※ニンテンドーDSiウェアの「うごくメモ帳」)で書いたり口頭でしゃべったりして。それを大枠の絵コンテにしてもらって、簡単なモーションを付けて実際の尺の映像にして、足りないところは足し、タイミングのおかしいところは直し…というやり方で監督に近いところまでやらせてもらいました。

川村 観ながら、宮本節を随所に感じました。
宮本 でも、そんなことをしていたら、20分のものを作るのに2年以上かかってしまって…(苦笑)。

川村 それはハリウッドの巨匠並みの時間のかけ方ですね(笑)。
宮本 否定はしません(苦笑)。考えていたイメージの4倍くらい時間がかかったので、お金も4倍くらいかかりました。ちなみに映画って怖いなと思ったのは、編集段階まで確認できなくて、そこでいろいろ言っても、もう今さら修正できないと。ゲームだと僕、もう土壇場まで直しますから。

川村 ちゃぶ台返しをよくなさるんですね(笑)。
宮本 そうそう。予定調和で作ったものより、積み上げていきながら、アンバランスなんだけど何とかバランスが取れそうといったところでまとめた方が、ずっと面白いものになるんですよね。