テクノロジーを理解することはどれくらい大事ですか?

川村 学生時代の宮本さんは完全にアーティストだったんですね。
宮本 本人は自分で作ったものを見ても「ぜんぜんファインアートじゃないや」と思って過ごしてましたけどね(苦笑)。それで会社に入って翌年くらいに、世の中で『スペースインベーダー』がどーんとヒットして、商品企画の一つとして面白そうだなと思った。そこからはさすがにコンピュータと付き合おうと決めて、周りに技術屋さんがたくさんいたので、彼らにいろいろと習い始めたんですが、意外と理屈っぽい世界が楽しかったですね。「こういう原理で動いているんだったら、こういうことはできないわけですね」と、できないこと探しみたいなことも始めて(笑)。

川村 宮本さんの修業時代ですね。
宮本 最初に衝撃だったのは『スペースインベーダー』がカラーになったとき、ブラウン管の上からカラーテープが貼られていたんです(笑)。それで技術の人に「絵そのものをカラーにできないんですかね」と話をしたら「できないよ」って言うんですよ。でも、その後ナムコから『ギャラクシアン』というゲームが出て、これがばっちりカラーだった。だから「あっちはカラーになってるやん」と問い詰めた。

川村 そこで理系に攻め込んだわけですね。
宮本 そうしたら、「1ビットで絵を描いたら白か黒しかないけど、2ビットで白と黒を重ねると3色になるから、できないことはない」と言い出した(苦笑)。そのときにわかったのは、ロジックで話せば割り切ってもらえるということと、ハードを作っている技術者は現実の話しかしないので、可能性については別の視点で話をせなあかんなと。

川村 なるほど。
宮本 それからは技術の人に無理だと言われても「なんでですか?」といちいち踏み込むようになって、そうしたら彼らも意外と面白がって教えてくれたりして、僕も「じゃ、これをこうしたら、こうなるの?」と返したりするようになりました。だから、僕はずっとプログラマーに教えてもらいながら、こちらからもプログラマーに絵の提案をして…というスタイルでやってきました。うちは今でもデザインをする人も全員、ハードウェアの講習をするんです。僕の経験上、ハードがわかると遊びの設計がしやすいんですよ。