ゲーム作りには文系と理系の両方が必要?

宮本 もう一つ大事にしてきたのは「自分が触っていて気持ちがいいように作ろう」ということです。クリアできたとか誰々より強いとかとは別の軸で、操作している瞬間が楽しかったり、ボタンを押したときの反応が妙にうれしいとか、自分の生理的な体感とぴったりくるように作ろうと。

川村 そういう意味ではスーパーファミコンのLRボタンはすごく象徴的で、押したときにマリオカートがぽんぽんっと弾んでいく感じが、まさに生理的に気持ちよかったのを覚えています。あれができたのは、任天堂が筐体(きょうたい)を作る会社であるという強みも大きかったんでしょうか?
宮本 僕は工芸大学の出身で、任天堂に入った頃はゲームセンターにあるテーブルゲームとか、箱の中に入って遊ぶアーケードゲームのデザインをしていて、メカの設計者と一緒に作っていたんです。その流れでファミコンやスーパーファミコンも作るようになって、そこでもコントローラは設計の人間と一緒にやっていましたね。その後のWiiも、ずっと絵と技術をワンセットとして開発してきた感じです。

川村 ゲームの世界は、アートやストーリーといった文系の世界と、プログラミングやエンジニアリングなどの理系の世界が限りなく一緒にならないと、気持ちいいものとか面白いものにならないんでしょうか?
宮本 そうだと思います。ただ、大学時代はプログラミングにはまったく興味がなくて…。だから、学科の課題でも保育園の玩具とか大型の遊具とか、そういうものばかり設計していました。任天堂への入社が決まったときも、大学の先生には「どうしてきみはファインアートの方に行かなかったんだね?」と言われたりしましたね。