「上手じゃない人でも遊べるゲーム」をどう作ったのか?
川村 僕は1979年生まれなので、『ドンキーコング』から入って『スーパーマリオ』をやって、ファミコンからスーパーファミコン、ゲームボーイまで、宮本さんが作られたゲームは世代的に全部通ってきているんですけど、ゲームのヘビーユーザーではないんです。点でしかゲームに接してこなかったにもかかわらず、手を出したすべてが「宮本茂さんという人が作っている」と大人になってから知って、驚きました。
宮本 それはありがとう。
川村 僕、ゲームが下手くそだったんですよ。みんなで集まってファミコンをやっていても、どんどん差が開いて寂しい気分になってくる。だけど、宮本さんのゲームは輪の中に入れたし、他人のプレイを見ているだけでも楽しかった。宮本さんはゲーム作りにおいて、そこは意識されていたんでしょうか?
宮本 プレイヤーが腕を上げたときにさらに楽しめるように作るというのは絶対条件ですが、「ゲームというのは上手じゃない人も、たくさん遊んでくれているんだ」ってことも、割と若い時期から自覚していました。『スーパーマリオブラザーズ』は世界で4000万本以上売れたわけなので、「遊んでます」と言ってくれる人も多かった。でも、話をしていると全員が全クリアしたわけじゃないことがわかってくるんです。
川村 いろいろな人にそれぞれの楽しみ方があるんですよね。僕も映画を作るときは、単純に娯楽として楽しむ学生、ドラマとして感動する大人、テーマや技術について語るマニア、それぞれのレイヤーで楽しんでもらいながら、一緒に映画館にいる状態が理想だと思っています。