「NHKのニュースはわかりにくい。もっとわかりやすくしなきゃいけない」とずっと言っていたら「じゃあ、お前がやってみろ」とお鉢がまわってきた。

 それで始めたら、大人、とりわけ高齢者が見るようになったのである。そこで池上は読者を発見した。

「私のやっている仕事は
基礎の基礎の啓蒙活動」

「だから、私のやってる仕事っていうのは啓蒙活動ですよ。本当に基礎の基礎の啓蒙活動をしているにすぎません。私の本や『週刊こどもニュース』で『初めて政治に興味を持ちました』という人が大勢いるんですね。『ああ、うれしいな』と思います。私はその仕事してるんだなって」と池上が自己規定したので、「それだけで満足はしてないでしょ?と」と挑発すると、「いや、誰かがやらなきゃいけない仕事ですよ」と応じた池上に、私は、「もちろん」と受けた。

 すると池上は、「だから、私の仕事はそれです。社会に関心を持ったら、その後佐高さんや他のいろんな人の本を読めばいいわけです。誰かが基礎のところをやらなければいけません。他にやる人がいないから、私がやるしかないのかなって思っています」と答える。

 そんな池上に私は、あえて、「でも池上さんはパレスチナ問題に情熱をかけているということは、やっぱり弱者や、無辜の民への思いがあるんでしょう。そうすると、解説からもう一歩出るべき時もあるじゃないですか」と迫った。

 それに対する池上の返事は、「うーん。いやー、やっぱりそこで『私ごときが』って思うんですよ」だった。池上と私の違いは国民を信じ切れるかどうかなのかもしれない。

「苦労して判断材料ばかり提供することに虚しさはないのか?」と尋ねると、池上はこう答えた。

「材料を与えたら、国民や視聴者や読者に判断してもらえるだろうと思っています。何が正しいのかはともかく、長期的に見て、私たちのためになるような判断をきっと国民はしてくれると信じてます。短期的にはいろいろ迷ったり、変になったりするかもしれません。けれど、長期的に見れば、一人ひとりが自分で判断をし、何かを決めることこそ、民主主義の礎ですから。そのためにみなさんがニュースに関心を持ってくれることが大事だと考えています」