「肩書」には、人を魅了する不思議なパワーが宿っています。

 特に出世をのぞむ人にとっては、ある特定の「肩書」をもつことがひとつの目標になっている人もいるのかもしれません。

 ところが、「肩書」は、その組織のなかでの立場を示すものにすぎません。

「住所」がその土地の場所を表すだけなのと同じように、「肩書」は、所詮、記号にすぎません。そのことに気づくのは、退職してからという人も多いようです。

「肩書」ではなく、「自分自身」に誇りをもつ。

「肩書」に誇りをもつのか、「自分自身」に誇りをもつのか、この違いはとても大きいものです。

自分で自分を褒め称えたことはありますか?

 さて、この「自分自身」に誇りをもつとはどういうことなのでしょうか。

 謙虚が美徳とされてきた私たち日本人にとって、「自分」に誇りをもつというのは、少し気恥ずかしいことかもしれません。ましてや、誰かから「自分を尊ぶ心」をもってくださいと言われても、イメージが湧かないものです。

 こんなエピソードがあります。

 これは、若手秘書だった頃の私とその当時の上司とのやりとりです。

 秘書として未熟であった若かりし頃、一所懸命に秘書としてのスキルを身につけようと躍起になっていた姿を見て、上司はこのように言いました。

上司:「頑張っているようだね」

私:「ありがとうございます。まだ、先輩秘書Aさんのようにすぐに対処することができないので、情けなくなることばかりです」

上司:「大丈夫。それは誰もが通る道だからせいぜい楽しむといいよ。1年後には経験したくても、もう経験できないことだから(笑)」

私:「楽しんでと言われても…」

上司:「秘書として働くうえでスキルアップも大切だが、それよりも自分を尊ぶ心をもつことがなによりも大切だ」

私:「自分を尊ぶ心ですか?」

上司:「そうだ、これはどんな職業の人でももつべき大切なことだ。1番大切なことと言ってもいいだろう。なのに、多くの人はスキルや技術などの習得にかかりきりになってしまっていて、自分を尊ぶ心をすっかり忘れている」

私:「(小声で)はい」

上司:「まずは、秘書としての自分を尊ぶ心をもってみなさい。そこが本当のスタート地点かもしれないよ」