いま、多くの企業は即戦力を求めているはずですが、そこでは強烈な営業実績であるとか、資格の有無だとか、計量可能な能力だけが採否の判断基準になっているように思われます。しかし、組織はハイ・パフォーマーだけでうまく回るわけではありません。Aさんは自分を笑いのネタにしていますが、実のところハイ・パフォーマーです。でも、計量可能なハイ・パフォーマーではなく、その能力を人柄やビジネス経験を含めて定性的に評価されて、取締役を任されているのです。

「どこの会社にも必ずいる懐刀タイプや、番頭タイプ、裏方タイプとか、いろいろそろっていて初めて会社はうまく回るし、組織は活性化すると思うんだけどね。どう思う?」。Aさんはビールのジョッキを空にしながら、私にそう聞くのです。

「利益貢献」というモノサシだけを重視して
本当に利益が上がるのか?

 企業組織では、社員の評価は一般的に、目標の達成度を定量化して比較考量されます。つまるところ、それは「一つのモノサシ」で計られます。それが効率的な方法だからです。

 しかし、その方法によって損なわれたものも多いのではないでしょうか。前に述べた懐刀タイプや、番頭タイプ、裏方タイプ、組織のなかの潤滑油タイプ、よろず調整タイプ、とりあえず解決屋等々、多様な人材によって組織はうまく回り、活性化するものだというAさんの指摘は的を射ていると思います。そんな多様な人材を、一つのモノサシで評価できるものではありません。

 しかし実際には、利益貢献というモノサシだけがクローズアップされるようになっているのではないでしょうか。

 連載の初めでも述べましたが、バブル崩壊後の20年の間に、企業経営にとって人材はコストとしてのみ計られるようになりました。パーソナリティは、ほぼ評価の対象になりません。考えてみれば、職場が殺伐としてくるのは当然です。