5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…#19Photo:PIXTA

3期連続減益から復活を目指す王者エムスリー、医療データ利活用で躍進するJMDCを中心に合従連衡が加速している医療ITセクター。どの企業も成長できるステージが終焉しただけに、今後5年間は優勝劣敗が進む可能性が高いはずだ。果たして業界序列に変化はあるのか。そして躍進する企業とは?特集『5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…』の#19では、「製薬マーケティング支援」「医療データ利活用」など医療ITセクターのビジネスを分析しつつ、5年後に伸びる企業、失速しかねない企業について具体名を挙げて大胆に予測する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

医療ITは三国時代に
覇権を巡り合従連衡が加速

 復活を目指す王者エムスリー、M&Aを加速するJMDC、独自の市場を目指すUbie、HOKUTOやMediiといったスタートアップ企業――。SMBC日興証券の徳本進之介シニアアナリストは医療ITセクターについて「三国時代のように三つの勢力による覇権争いに突入するだろう」と分析する。

 大前提として医療ITセクターは、中長期の成長期待は大きいものの、顧客に当たる製薬企業、医療機関、健康保険組合の経営状況やデジタル投資の動向は芳しくなく、成長期待を下回る局面が続いている。

 医療ITの上場企業による事業は、医師会員サイトを中心とする「製薬マーケティング支援」と「医療機関向けDX(デジタルトランスフォーメーション)」「医療データ利活用」の三つに大きく分類できる。だが、足元はその垣根がなくなりつつある。さらなる成長の種をつくるために各社が事業エリア拡大を模索しているからだ。

 特に厳しいのは製薬マーケティング支援だ。東海東京インテリジェンス・ラボの吉田正夫シニアアナリストは、発注元である製薬企業が販管費を抑制する傾向にあると指摘する。

 また金利の動向などマクロ環境も各社の戦略に影響を与えている。

「米国で金利が高止まりしているため、スタートアップ企業が出口を描きにくい一方、上場会社からするとバリュエーションが低下しているため買収がしやすい。合従連衡が生まれやすい環境にある」(徳本氏)

 果たして医療ITセクターは縮小均衡論を乗り越えて、再び輝くことができるのか。どの企業も成長できるステージが終焉しただけに、今後5年間は優勝劣敗が進む可能性が高い。勝ち残る企業の条件とは何か?

 次ページでは医療ITの各領域の現状、エムスリーやJMDCなど主要企業の戦略を解説しつつ、誰が買うのか、誰が買われるのかを含めて合従連衡後の覇権争いを大胆に予測。5年後に伸びる会社、失速しかねない会社についても具体的に明らかにする。

図表:5年後の医療IT(サンプル)