
産業用ロボットのグローバル企業で、福岡県北九州市に本社を構える安川電機。BtoB業態のため「誰もが知る企業」ではないが、FA(ファクトリーオートメーション)業界では存在感が大きい。実は早くから目標管理制度を取り入れ、柔軟に待遇に反映させてきた。非管理職でも1000万円プレーヤーが生まれ、課長クラスでは年収1500万円が見込めるのだ。連載『メーカーの採用力 待遇・人事の真実』の本稿では、知られざる安川電機の給与テーブルと人事制度を大公開する。(ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)
30歳で年収1000万円に達することも!
FA業界の人材争奪戦を制する人事制度とは
「機械工学の構造設計を学んできた学生が減っている」。安川電機のコーポレートブランディング本部長で人事部長も兼任している林田歩・上席執行役員はそう感じている。理系学部の学生の間では近年、AI(人工知能)やソフトウエア、データサイエンスなどソフト領域の人気が高まり、機械工学に進む比率が下がっているのだ。
しかしながら、ものづくりの企業ではハードの構造設計を学んだ人材が欠かせない。「奪い合いは激化している。学生に『選んでもらう』立場だということを忘れてはいけない」(同)。
そうした中で、採用において特に重要視しているのが高等専門学校(高専)卒の枠だ。「ものづくりの即戦力の若者を育てる、世界でも日本にしかない素晴らしい制度」(同)だからだ。自身も地元・福岡の高専出身の林田氏は、そう強調する。例年、新卒採用の15%程度が高専卒だ。まだ伸び代があるとみて、安川電機はロボットコンテストの「高専ロボコン」の協賛などを通じてアピールを図っている。
他社の中には、新卒1年目から高い給与を掲示する企業が増えているが、画一的な若手の賃上げ競争に乗るつもりはない。そもそも、完全なBtoB企業である安川電機を志望してくる求職者は、新卒の学生であれキャリア採用の経験者であれ、産業用ロボットやモーションコントロールのファクトリーオートメーション(FA)分野の技術者として働きたいという明確な目的意識を持っている。林田氏は「半導体製造会社やメガバンクを相手に競争するつもりはない」という。
実は安川電機は、キャッチーな数字で勝負せずとも着実に成果を上げれば“かなり恵まれた待遇”を得られる人事制度を備えているのだ。
次ページでは、非管理職で年収1000万円、課長クラスでは年収1500万が見込める安川電機の給与テーブルを大公開する。