まるで勝手のわからない海外の国で事業展開を行う際の成功の秘訣は、現地で良いパートナーをみつけることだ。海外進出において語り尽くされた言葉の裏に、どれだけ多くの企業が、現地パートナー相手との関係で痛い目にあったことだろう。今回は成功する現地パートナーの見つけ方、特にパートナー候補の検討・リストアップ・スクリーニングについて考えたい。

成功する合弁、3つの特徴

 パートナー候補を検討する際に、どのような相手であれば、よりよい関係を構築できでかつ長続きするのだろうか。多くのケースを見ていると、少なくとも下記の3点が重要な要素のようだ。

成功する合弁の特徴
●基本的な目的・価値観が同じであること
●お互いが補完関係にあること
●お互いの強みがかぶらないこと

 一点目の「基本的な目的・価値観が同じであること」は比較的わかりやすい。会社として目指す点が同じかどうか、信頼できる相手か、こだわるポイントが似ているか。特にオーナー企業の場合は、トップ同士の考え方が似ているか、相性はどうか。こうしたことは、人間関係を長続きさせる場合において重要なように、企業間の関係においても重要だ。特に、言葉や慣習が異なるクロスボーダーの提携において、こうした価値観で結びつけるかどうかが、「言葉を超えた」関係の構築において重要になる。
 二点目の「お互いが補完関係にあること」も比較的わかりやすい。そもそも、合弁は自分の弱いところを現地企業の強みで補完するために行うことが大きな目的だ。従って、相手が当方の弱い点について、サポートしうる強みを持っていることが重要だ。反対に、相手にとっても、日系企業ならではの強みを期待して合弁を行いたいと考える。従って、それが技術力や、日本ブランドや、マネジメント力といった、相手にとってアピールになりうる強みをしっかり持っていることが前提になる。
 三点目は、「お互いの強みがかぶらないこと」だ。これはどういうことだろうか。もし合弁が成功裏に進んだ場合、両社は「どうせ成功するなら、この事業を自社だけでやれれば、分け前を相手に渡さなくてもいいのに」と思いだす。持ち分比率の制限がある外資系企業側は、そうは思っても、これ以上持ち分比率を上げられないため、仕方なく現地企業との合弁で事業展開を続けざるを得ないだろう。一方で現地企業側は、特段そうした制限もないため、やろうと思えば自社のみで展開を始めてしまう。当然、こうしたことが起きないように、合弁解消後は一定期間、その類似する事業はできないような縛りを合弁契約に入れるのが一般的だが、新興国の多くでそれが守られずに現地企業が勝手に動き出すケースが散見される。
 これが、お互いの強みとなる分野が重なっている場合は、相手側は自社のみで合弁事業を行うことができると思いがちだ。一方で、お互いの強みがかぶらず、補完関係がしっかり成り立っていれば、「相手も自社のみで始めたいだろうが、日本側のパートナーがいてこの事業は成り立つ」となる。従って自社のみで事業展開を行うインセンティブは低くなるだろう。従って、より強みがかぶらないほうが、長続きする関係になりやすいのだ。