アドバイザーは活用するべきか
このように、候補企業のリストアップを含めた検討方法について記載してきたが、果たして自社内でできるのかと思うことも多いだろう。そもそも現地での知見もないし、現地でどのような企業があるのかもわからない中で、自社でそこまでを行うことは困難と思う企業も多い。そうした場合、外部アドバイザーに候補企業のリストアップと、その後のスクリーニング、交渉を含めて依頼を検討することは十分考えられる。ある程度現地の知見がある企業にとっても、アドバイザーを活用するメリットには以下が挙げられる。
ポイント(1)自社の名前を明かさずに、同時に複数候補へのアクセスが可能
自社で候補企業に会いに行く場合は、相手に誰だかがわかってしまう。その結果、候補先企業からは、どこの企業が会いに来たという情報が最初の段階から筒抜けになる。業界の横のつながりが密接な場合、「うちに日系のどこどこが来たよ」という情報が、流布されかねない。
そうした中で、候補企業に同時に複数の候補にアクセスしている事実が知られると何かと面倒な話になる。あそこにアプローチした後にうちにも来た等、うわさベースで動きが広まると、こちらの打つ手が限定的になりかねない。
一方で、アドバイザーの活用により、自社名を伏せて複数の候補企業に当たることが可能だ。その際に、「日系企業で組みたいところはあるか」「日系企業のこの会社はどう思うか」と、自社に対する相手の見方等を知ることができる。こうした質問は、業界内の企業が聞いても、相手が本音ベースでなかなか答えないだろう。このように、アドバイザーがノーネームベースで当たることで、複数のパートナー候補にアクセスし、より多いサンプルの中からの客観情報に基づき、より効率的な提携先の選定が可能になる。
ポイント(2)客観的な選定基準に沿った最適なパートナーが選定可能
自社による選定の場合、候補企業の選定基準や、候補対象先業界等について、どうしても固定観念にとらわれた発想になりがちだ。その結果、どうしても同じタイプの候補ばかりを考えがちになる。前述の「成功する合弁、3つの特徴」において、よりよいパートナーシップ構築のためには、「お互いが補完関係にあること」と同時に、「お互いの強みがかぶらないこと」の重要性を示した。業種のある程度のかぶりも大事だが、お互いが提供し合えるある程度の「間」も重要で、そうなるとよりよいパートナー候補は対象事業から少しかぶるけれどちょっと別の業界にいたりする。そうした発想は、どうしても自社内からは出てこなかったりしがちで、客観的な視点から候補を提示できるアドバイザーの存在は重要だ。
ポイント(3)自社リソースの効率活用
自社によるパートナーサーチでは、リソースの問題もあって、多くのパートナー候補へのアクセスは難しい。その結果、とりあえず2、3社当たって、「これ以上動くのも大変だし、この会社は何となく感触もいいから、もうここでいいか」となりがちだ。アドバイザーを活用することで、自社のリソースをそれほど割かずに効率的により多くの企業との面会が可能になる。
ただ、アドバイザーを使えばすべていいわけではない。自社のニーズをしっかり汲み取り、より多くの希望に沿った候補先にアクセスでき、しっかりと案件のハンドリングも含めて対応できるアドバイザーを選ぶことが重要だ。