***

 これまで、有休で細切れに休んで対応していたが、母の退院に合わせて、母と父の生活が落ち着くまで、思い切って、会社に母の介護休業を申請することにした。

 この機会に、お世話になるヘルパーさんとはきちんと話したいし、デイケアの施設の雰囲気も見ておきたかった。それ以外にも、日々の生活の支援のためのサービスを調べたり、決めなければならないことも多かった。自宅と実家の住まいが離れているため、しょっちゅう行き来してというのも大変で、施設やサービス先の営業時間を考えると、平日に動けるまとまった時間がほしかったということもあった。

 妻には、「これまで仕事人間で何もやってくれなかったのに、自分の親の介護はやるのね(笑)」と嫌味も言われたが、それでも、「これからはそれぞれの親のことを二人で相談できるようになってよかった…」と言われ、これまで妻任せだった自分を反省した。

 母は、相変わらず外出時は車椅子が手放せず、リハビリに行くと疲れるとリハビリを嫌がってしまい、自宅では横になったり、座ったりして過ごすことも多くなった。座ってできる家事はやっているものの、トイレなどは一苦労で、抱え込みながら車椅子からトイレへ移動させるのだが、体重移動は痛みが伴うため、イタイイタイと言われるたびに憂鬱になった。

 父の認知症は、前から少しずつ症状は出ていたのだろうが、一緒に生活していなかったため、ぜんぜん気がつかなかった。そのため、今回発覚したときはすでに中等度に進行しており、気にしてみているとずいぶんと心配なことも多かった。一番困るのは、食事をしたことを忘れて、食事の催促をすることだった。「さっき食べたばかりだろ?」と何度いってもお腹がすいていると訴える。いくら認知症の症状だとわかっても、ついイライラして怒鳴ってしまい、その結果、萎縮して小さくなった父親をみて、反省する毎日だった。

                ***

自分の親だから「人に頼れない」
そんな気持ちがあなたを追い詰める

 介護は、いくら事前準備や知識が役立つとわかっていても、自分がやることにならない限り学ばない人が多いのも事実です。そのため、いざ親の介護をするときになって、知識がないために、戸惑い、今までの親との関係の延長線上で対応しようとします。そして、むやみに怒って関係を悪化させてしまったり、病気の進行を早めてしまったりしてしまうのです。

 認知症の症状は人それぞれですが、いざ自分の親となったら、ついしっかりしてほしい、認めたくないという心理が働き、発見が遅れることがあります。しかし、発見が早いと薬が効く場合もありますし、進行を遅らせるために接し方を工夫することもできます。勘違いが多くなったり、心配なことがあるときは、恐れずに、認知症を診察できる物忘れ外来などを受診することをお勧めします。もし近くに専門の医療機関がなければ、まずは、かかりつけ医に相談してみるのもいいでしょう。

 また、自分の親だからと人に頼ることができず、一人でがんばりすぎてつらくなるということもよく起こります。しかし、親のことは夫婦や家族の問題でもあるので、関係者で話し合うことはもちろん、介護保険などを使いながら、ケアマネジャー、ヘルパーや、地域の包括支援センターなどの社会福祉士、保健師などに、実践的にも、心理的にも助けてもらいながら行っていくことが大切です。