ところで2人が再婚したのは60代。人生をどのように終わらせるのか…「老い支度」に取り掛かってもいいくらいの年で、当然のことながら「介護」のことも視野に入れなければなりません。夫婦の一方の身体が不自由になったら、もう一方が身の回りの世話とするのは納得済みで一緒になったはずです。もちろん、漠然とした将来の不安は常に頭のなかにあったはず。とはいえ今現在はインドネシアで悠々自適の生活を満喫しており、妻は近い将来に起こり得る「介護」という現実から目を背けていた方が気は楽でしょう。

「今が楽しければそれでいい」と、結婚から10年間、都合の悪いことから逃げ回り続けてきて、いざ間近に迫ってきた介護という現実を目の当たりにし、腰が引けてしまったのではないでしょうか?今となっては、妻が当初から「夫の介護」をする覚悟があったのかどうか、定かではありません。

 将来の介護を見込んで、功さんは日々の生活費をすべて自分の年金から出しており、妻の年金には一切手をつけていませんでした。だから妻は自分の年金を一切減らすことはなく、何に使おうが完全に自由という非常に恵まれた年金生活を送ることができたのですが、功さんが甘やかしすぎたせいでしょうか。妻は飽き足らずに、今度は夫婦の口座から無断でお金を引き出していました。

妻の精神状態が悪化
「階段から突き落とされた。このままじゃ殺される」

 功さん夫婦はこれから財産が増えることはなく、むしろ減る一方なので、手持ちの財産は「虎の子」です。妻のおかしな言動は一喝すべきでしょう。しかし、功さんはあえて妻を咎めることはせず、「将来のことを見据えて、そのくらいのわがままには目をつぶろう」と見ぬふりをしてました。

 それなのに妻の方から離婚を切り出してきたのですから、功さんの怒りが収まらないのも無理はありません。

「妻にも生活費を出させるべきだったし、勝手に解約した定期預金も元に戻させた方が良かった」

 そんなふうにタラレバを語っても後の祭りです。このように功さんは完全に妻のことを信じきっており、まさか妻が今までの厚遇を蔑ろにし、功さんを裏切るような真似をするなんて全くの想定外。三行半を突きつけてくるという予感は微塵もなかったのです。

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