自動車 “最強産業”の死闘Photo:Bloomberg, SOPA Images/gettyimages

ホンダがAstemo(アステモ)を子会社化する。1523億円を投じ、日立製作所からアステモ株式の21%分を取得する。アステモの主導権を握ることで、ソフトウエア開発などにおけるホンダとの協業を加速させる。だが、理由はそれだけではない。ホンダが出資を引き上げた真の狙いとは一体何か。特集『自動車 “最強産業”の死闘』の本稿では、アステモ関係者やホンダ関係者らへの取材を基に、子会社化の舞台裏を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

アステモ子会社化の知られざる目的を
ホンダ幹部やアステモ関係者が激白

 ホンダが、ケイレツのサプライヤーの再編をさらに前進させた。12月16日、自動車部品メーカーのAstemo(アステモ)を子会社化すると発表したのだ。

 アステモは、2021年にホンダ系部品メーカーのケーヒン、ショーワ、日信工業の3社と、日立製作所の完全子会社だった日立オートモティブシステムズの4社が統合して誕生した。

 設立当時の出資比率は、ホンダが33.4%、日立が66.6%だったが、現在はホンダが40%、日立が40%、産業革新投資機構(JIC)の子会社であるJICキャピタルが20%となっている。ホンダは1523億円を投じ、日立からアステモの株式21%分を取得する。26年4~6月ごろの取得完了を見込む。アステモへの出資比率は、ホンダが61%、日立が19%、JICキャピタルが20%となる。

 25年4月には、日立アステモからアステモへの社名変更を行い、日立色を薄めていた。日立グループ幹部も、「日立は(ルマーダなどIT領域に注力し)ものづくりから、離れている。これまでアステモは日立主体だったが、ますます(旧日立系と旧ホンダ系3社の)統合は進む」と見通す。

 ホンダ幹部は、「(出資比率の引き上げを)考えなければならない。われわれに近い枠組みでやっていきたい」と以前から打ち明けていた。ホンダからすれば、アステモの子会社化は「既定路線」だった。とはいえ、ディールに携わった関係者によれば、「継続して議論していたが、具体的に進んだのはここ3カ月だ」という。

 ホンダは公表資料の中で、アステモ子会社化に踏み切った理由として、ソフトウエアや自動運転技術での開発強化を挙げる。しかし、アステモ子会社化はこれらの理由にとどまらない。一体何か。

 次ページ以降では、アステモやホンダ関係者らへの取材を基に、アステモ子会社化の舞台裏を明らかにする。