インタビューに応じる木村研一氏(左)と長川知太郎氏 Photo by Yoshihisa Wada
2025年12月1日、デロイト トーマツ グループが、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、リスクアドバイザリーの主要3法人を統合し、合同会社デロイト トーマツを発足させた。なぜ今、専門性を持つ各組織を一つにまとめる必要があったのか。長期連載『コンサル大解剖』の本稿インタビュー前編で、新会社の代表執行役を務める木村研一氏(グループCEO)と長川知太郎氏の両トップが、統合の真の狙いと、競合アクセンチュアと一線を画す「質的転換」への戦略を明かした。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
3社統合でデロイト トーマツが発足
顧客の混乱を招く「組織の壁」を破壊
――12月1日にデロイト トーマツが発足しましたが、このタイミングで旧3社を統合した狙いは何ですか。
長川 一にも二にも「お客さまのため」です。より活用していただきやすい組織構造に変えたいというのが一番の動機です。
今まではアドバイザリーやコンサルティングを提供する会社が三つあり、それぞれが専門性を育んできましたが、お客さまから見れば「どこが自分たちに必要なサービスを提供してくれるのか」が分かりにくい側面もありました。
お客さまが組織変革を検討する際、3社全てが「できる」と言う。これでは「どこの扉をたたけばベストなチームが組めるのか」が不明瞭です。また3社で時間単価が異なるため、「価格の差は何なのか」と問われることもありました。
ブランドと価値、そして価格をシンプルで分かりやすく伝え、ワンストップでベストなチームを組成できる体制にする。これが最大の理由です。
木村 専門ファームである以上、どうしても「自分の専門」が先に来てしまう。例えば「デロイト トーマツ リスクアドバイザリー」という看板は採用や専門性の訴求には有利ですし、経営もしやすいサイズ感でした。
しかし長川が言うように、クライアントの悩みは専門領域で区切れるものではありません。特に中規模以上のクライアントに対し、専門性を前に出しすぎることで、グループとしてのベストな解決策を提示しきれないという悩みがありました。
――これまでも「デロイト トーマツ」の名の下、3社間でクライアントの紹介は行われていたはずです。あえて統合する必要はありますか。
長川 理想はその通りですが、組織にはそれぞれのKPI(重要業績評価指標)やアジェンダがあります。「本当は他社にパスすべきだが、自社でもできないことはない」という判断の迷いが過去には多々ありました。
組織の壁を越えてベストなチームを組めていたかといえば、正直自信がありません。今回、あえて組織の壁を壊すことでプロダクトアウト(組織都合)な悪癖を修正し、マーケットイン(顧客起点)で人材を組み立てるあり方を決定付けたのです。
かつて木村氏は、デロイト トーマツ グループの各法人が「日本一強い」と豪語した(『デロイトトーマツの史上最年少54歳新CEOが激白「買収&大量人材獲得」の秘策』参照)。今回の統合により、その強みが弱まるリスクはないか。また、長川氏が掲げた「コンサル1万人増員計画」は今後どうなるのか(『デロイトのコンサル採用責任者が初激白、「5年後に1万人」大増員計画と人材引き止め策の全貌』参照)。次ページで2人に問う。







