「お前、もう来なくていいぞ」

 立場を利用した嫌な奴と思ったのですが、さすがは出世する人です。

 彼はこれで凹むことなく、近くの公衆電話に駆け寄り、すぐ上司に電話をして、「あれ」が何だかを教えてもらい、即座に対応をしたそうです。

 その後、彼はこの責任者に、ことのほか、かわいがってもらえるようになり、この物流センターは彼の大口取引先になったそうです。

 この責任者と親しくなってから、こう言われたそうです。

「オレは意地悪な性格だから、どの会社からも新人が来ると必ず試すんだよ。お前だけだよ、見込みがあるなと思ったのは。だいたい、こんなこと言っちゃ怒られるけど、市販薬なんて、どこのメーカーだって大差はないんだよ。だから、今後の長い付き合いを考えると、オレ好みの見込みのある営業マンのところの製品を多く入れたくなっちまうんだよな」

入社早々の怒りの洗礼で、
俺様社員が変わった

 終始、穏やかで優しそうな笑みを浮かべながら話をしてくれた、ある美人管理職の入社時のエピソードは、あまりに強烈で忘れられません。

「プライドが服を着て歩いているような新人でした。私は米国のビジネススクールを卒業して、マーケティングに関する仕事をしたくてこの会社に入ったのに、最初の配属先は営業ですよ。新入社員研修の最終日には配属先がわかっていましたので、打ち上げのときには、一体どういうこと! なんでこの私が営業に配属されるわけ!? という抑えきれない怒りでいっぱいでした。

 その後、カラオケ大会になったのですが、私は完全にふて腐れていました。

 そんな私を見透かした人事部長が、よりによって私を指名したのです。

 『私、歌えません』

 そう言った私に、普段は温厚な人事部長が突然、本気で怒鳴ったのです。

 『お前、お客様に言われても、そう断るのか!』

 これから営業畑に行く私が、場をしらけさせたことに我慢できなかったのでしょう。

 そう言われた瞬間に、私の天狗の鼻が根元からポロッと取れるのを感じました(笑)。

 TOEICで満点を取ったプライドも、マーケティング理論も、戦略理論も、すべて吹っ飛んだ瞬間でした。でも、こんな洗礼を入社して1~2年で体験できない人は不幸ですね。その後、伸びませんから」