部下の育成に対して2つの視点を持つ

 育成に関しては、2つの柱があります(図1)。

 それは、ティーチングとコーチングという柱です。

 ティーチングは「教えること」が中心になります。一般的には、指示・命令型の育成方法と言われています。

 それに対して、コーチングは質問・対話型の育成方法です。

 コーチングでは、上司からの質問や対話(フィードバックを含む)を通じて、部下に気づきを促し、それを自発的行動へとつなげていきます。上司の役割は、部下の自主性や可能性を信じ、彼らの目標達成をサポートしていくことです。その前提として、上司と部下の信頼関係が必要になります。

 コーチングが機能する可能性があるのは、ティーチングによる基礎の習得が完了してからになります。この順番に逆はありません。

 その分野に関して何の知識も持っていない人が「どうしたらいいと思う?」なんて上司に聞かれても困ります。答えようがありません。仮に答えが返ってきたとしても、それは的外れな答えか、もしくは抽象的な答えでしょう。

 このような人たちには、「ああしろ、こうしろ」と的確かつ明確な指示・命令が必要です。そして何よりインプット(これもティーチングです)が必要なのです。

 また、基礎的な知識や経験もない人に、自分で考え自発的に行動することを求めるのは酷な話ですし、そんなことをさせるのは危険です。

 ティーチングとコーチングは、育成の両輪であり、どちらが優れていて、どちらが劣っているという発想ではありません。ただ、特にコーチングに関しては、順番とバランスを間違えて使ってしまうと、効果がなくなるどころか害のほうが多くなります。

こうすれば失敗しないコーチングの流れ

 本連載では、コーチングについてあまり深くは触れませんが、コーチングの基本的な流れはすぐに職場で応用できますので、簡単に説明させていただきます。

 コーチングでは、まず目標を設定します。次に現状把握を行います。

 まず、最大のポイントは、この順番にあります。

 目標設定が先で、その後に現状把握を行います。

 この理由はおわかりでしょうか。