美容に対する意識が高い中国の女性たちをターゲットにしたビジネスは、底知れない可能性を秘めている。広告代理店業として現地に進出し、中国人スタイリスト向けのトレンド雑誌『絲路』や中国最大級のポータルサイト『美優網 BeauBeau』を運営する上海美優文化伝播有限公司は、中国の美容・コスメ市場にいち早く楔を打ち込むことに成功したケースだ。同社の北野貴宗CEOに、成功の条件を聞いた。
――中国でビジネスを軌道に乗せた経緯を教えてください。
進出当時は、個人レベルで広告ビジネスを始められる環境ではありませんでした。外国資本が広告事業を行なうためには、中国企業と合弁企業を作る必要があり、なおかつ世界レベルの超大手外資広告代理店でないと、そのような合弁企業は作れないのが現状でした。
その後巡り合えた中国の事業パートナーが、超有名女性誌を発行していた会社の社長だったこともあり、渡航後は広告代理事業を拡大しながら、2004年に高級ヘアサロンに勤める中国人スタイリスト向けのトレンド・最新技術専門雑誌「絲路」を発行しました。
80元という当時にしてはかなり高めの価格設定だったのですが、同じ黒髪を扱う日本のトレンドや最新技術情報を欲していたスタイリストのニーズにマッチし、発行部数も3万部(隔月刊)となりました。
――主要事業は「美容(特に化粧品)のネットメディアビジネス」ですが、参入した経緯は?
いくつかある理由の1つが、美容やコスメの専門媒体が存在していなかったことです。
2つ目の理由が、中国人ヘアスタイリスト向け専門誌の発行を通じて、「日本が美容大国であること」がわかったこと。中国では、「日本のカット技術が最高」とされていました。収入の高い中国人ヘアスタイリストの中には、日本の美容学校に留学する人もいたくらいです。
中国人スタイリストの間では、日本はトレンド発信源と見られていて、「アジアのヘアトレンドは日本がリードしている」というイメージが浸透していました。
また、中国のヘアサロンにシャンプーなどを卸す代理商から、「日本の良い美容商品を紹介してほしい」と、よく言われていました。実際、世界トップの製造技術で造られた日本ブランドの化粧品は、フランスに負けないくらいのトレンドポジションがあるのです。