「下手くそ」、「不器用」、「センスがまるでない」、そして「プロで生きていくのは厳しい」…。
プロ入り時、こんな酷評を受けていたふたりの男が、たて続けに偉業を成し遂げた。
ひとりはレスター・シティのイングランド・プレミアリーグ制覇に貢献した岡崎慎司(30)、もうひとりは4月27日、歴代47人目となる2000本安打を記録した広島カープの新井貴浩(39)である。
「期待されていなかった二人」が
偉業を成し遂げた裏には何があったのか
岡崎が所属するレスターのプレミアリーグ優勝は世界中のサッカーファンから「奇跡」と受け止められ称賛された。世界最高峰のサッカーリーグに数えられるプレミアリーグは、各国のスター選手を金の力でかき集めるビッグクラブでなければ優勝できないといわれてきた。年俸総額が300億円を超えるチェルシー、マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、アーセナルの4クラブだ。
ところがレスターの年俸総額はその4分の1の約75億円(リーグ20クラブ中17位)。昨季は14位でなんとか1部残留したが、今季も降格候補のひとつに数えられていた。そんな弱小クラブが優勝したのだから、まさに奇跡でありサプライズ。このチームで岡崎はレギュラーFWとしてプレーしたのだからすごい。プレミアリーグでは中田英寿、稲本潤一、川口能活、香川真司など10人の日本人選手がプレーしているが、岡崎はこの活躍で「最もプレミアで成功した日本選手」と評価されるようになった。
これに比べると新井の2000本安打は日本国内の記録であり、若干スケールは見劣りするかもしれないが、それでも長年レギュラーとして活躍しなければ達成できない記録であり称賛に値する。
そして、このふたりに共通するのが、プロ入り直後は周囲から「期待されていなかった」ことだ。
もちろんサッカーにしても野球にしても、プロになること自体、大変なわけで、ふたりにはその素質はあったのだろう。だが、プロはその時期の傑出した才能が集まる場所で、その中に入ると、ふたりの実力は見劣りするものだったようだ。その経歴とエピソードを見ていこう。