選挙費用は100万円もかからないが
地道な「営業努力」が求められる

 実際に縁もゆかりもない選挙区から出馬・当選した地方議員に話を聞いた。

「ビジネスセンスを持っていれば政治の世界でもやっていけます。政治家とは、いわば自分という商品を売り込む営業マンのようなものです」

 こう語るのは東京都多摩市議会の遠藤ちひろ議員(40)だ。今、地方政治家を目指す人の間で話題の書籍、『市議会議員に転職しました。』(小学館)を、日経BP社記者から横浜市議会議員と転じた伊藤ひろたか(38)議員と共に著したことでも知られる、若手地方政治家のひとりだ。

 企業経営者から政界を志した遠藤議員は、縁もゆかりもなかったという東京都多摩市での選挙ではまず、みずからの名前を有権者に覚えてもらうことからはじめたと話す。「有権者の方は知らない人間に投票することはありません。名前を憶えてもらうことこそが重要です」(遠藤議員)。

 朝・夕と駅前などの街頭での挨拶、日中はチラシやパンフレットのポスティング、夜は異業種交流会や青年会議所などの会合に、「たとえ呼ばれていなくても足を運ばせていただいた」(同)という。やがて熱心に応援してくれる支持者もできた。ここまでくるのに約半年かかった。

「議員とは“就職先”ではありません。有権者のために何ができるか、何をさせていただくかです。志を持って、真面目に自分自身と政策を有権者の方に訴えていけば、誰でも当選できる可能性はあります。もちろん若い人でもです」(同)

 前回の選挙では、「選挙費用は100万円もかからなかった」という遠藤議員の話からも、地方議員という立場は世間で思われているほど遠いものではなく、政界との縁がない人でも努力を重ねれば十分になれることは間違いなさそうだ。

 こうした地方議員の実情が世に知られることは、これまで遠い存在とされてきた政治がより身近なものとなり、ひいては地方政治を志す人も増えてこよう。

 全世界に配信された“号泣会見”の主人公・野々村竜太郎兵庫県議(当時)も、皮肉なことではあるが、地方議員の実情について世に知らしめた人物の1人だと言えるだろう。彼が残した政治家としての唯一の“実績”かもしれない。真面目に地方政治に取り組んでいる政治家にとっては大迷惑な話ではあるが。