次に成功法則です。1「原作が堅めの名著・大著」はまあ一応、そうだとして(少なくとも430頁の大著であり、8万部のヒット作である)、問題はその他の項目です。

 どうやって「若い女性が主人公」の「物語性の高い」マンガにするのでしょうか? いや、そもそもこの成功法則は、この『経営戦略全史』に当てはまるものなのでしょうか?

 『経営戦略全史』は、各経営戦略論をその時代背景とともに示しています。そしてその中核には必ず個人(巨人たち)がいて、その主張(戦略論)だけでなく、その苦悩と情熱、成功と失敗が描かれています。それによって初めて、その戦略論の価値や意図が伝わると思ったからです。そしてその個々の物語の連鎖が、100余年にわたる経営戦略論の歴史となっていくのです。

 それを「若い女性が主人公」の「物語性の高い」マンガに置き換えて、意味があるのでしょうか? 正直に言えば、私自身にそんなキャラや物語をつくる自信がありませんでした。私に水野敬也さんほどの妄想力と文才があれば、『夢をかなえるゾウ』のような超絶キャラと物語を紡ぐこともできたのでしょうけれど、諦めました。

 『マンガ経営戦略全史(仮)』では、主人公がすべて異なるオムニバス形式のマンガを目指すことにしました。つまりは基本、原作のままです。目指せ「まんが 日本の歴史」!

「若い女性主人公の成長物語」に伍する価値は「面白さ」?

 そう開き直ったのはいいものの、では代わりにどんな価値で勝負すればいいでしょうか?

困ったときは顧客に戻る。『マンガ経営戦略全史』のターゲット(想定読者)はいったい誰なのでしょう?

 『経営戦略全史』発刊時にセミナーを開いてびっくりしました。それまでのビジネススキル系の本(*4)に比べて、男性比率が極めて高く(90%!)、年齢が10歳上(40~50代中心)でした。しかも多くが会社帰りのダークスーツ姿。

 そのセミナーは発刊直前の、しかも有料セミナー(3000円)だったので、みんな「読んで」はいません。題材と内容(と著者?)への期待だけで、集まった人たちでした。

 『経営戦略全史』が扱った、「経営戦略論」×「歴史」という題材のコアターゲットは、そんな歴史・戦略好きの課長・部長だったのです。

*4 『一瞬で大切なことを伝える技術』『一瞬で大切なことを決める技術』『「ハカる」力!』『発想力の全技法』など。