ビジネスコミックの成功法則。原作×女性主人公×物語……

 2013年10月に宝島社から発刊された『まんがでわかる 7つの習慣』は、大ヒットとなり、その後の詳細版3部作(*1)を合わせて138万部以上の超ヒットとなりました。2014年にもっとも売れた、ビジネス書、です。

 その成功には3つの要因があったと言われています。

1.原作:原作であるフランクリン・コヴィーの『7つの習慣』は世界3000万部、日本で160万部と言われます。誰もがその名は知る、屈指の古典的名著のひとつです。でも文章は少し堅めで頁数・文字数も多く、万人向けとは言えないものでもありました。だからこそ、マンガ化による新規顧客開拓余地がありました。

2.主人公:2011年に別冊宝島のA4型書籍として出された『まんがと図解でわかる7つの習慣』では、女子高生が主人公でした。『もしドラ』以来の(男性読者の心を掴む)鉄板設定です。たださらに、この本では20代女性が主人公となり、女性社会人の心を掴みました。

3.物語性:その女性主人公・歩が、亡き父が遺したバーを再開すべくバーテンダーとして自立していく姿が描かれています。バーに集う人々の葛藤、リアリティあるエピソード。歩の努力と成長の物語が共感を生み、『7つの習慣』への説得力を与えることに成功しています。

 この3つ(1「原作が堅めの名著・大著」、2「若い女性が主人公」、3「高い物語性」)は、「ビジネスコミックの成功法則」として認知され、その後の作品はすべてこれを踏襲することになりました。

さらに「価格」と「絵の質」が鍵か

 『まんがでわかる 7つの習慣』を世に出した宝島社の編集者 宮下雅子さんが拘ったことがもう一つ。それが1000円(税抜)という価格でした。

女性が投資していいと思うのは、ランチ1回分の値段(税抜1000円)までです!」と、渋る社内を説得しました。「10万部売れば1000円で売っても最低限の編集費は回収できます。私がそれだけ売ってみせますので、どうしても1000円で行かせてください」

 175頁、1000円の頁・価格設定は見事に当たり、購入者の実に6割が女性となりました。

 この作品の特長として挙げられるものとして、最後が(でもかなり大切なこととして)絵の質の高さでしょう。

 作画担当は、別冊フレンドで『校舎のうらには天使が埋められている』(全7巻)を描いた小山鹿梨子さん。そのスッキリした、でも暖かく動きを感じさせる「絵」が、読み手を物語に引き込みます。

*1 原作全体をカバーした『まんがでわかる 7つの習慣』の後、第2の習慣までの『同2』、第5の習慣までの『同3』、第8の習慣(7ではない)までの『同4』が出版された。2016年にはそれらをベースに『同Plus』が出された。