地元客向けフルデマンドと
観光客向けの駅待ちをこなす「EV乗合タクシー」

 EV乗合タクシーは前述のように15年10月にスタート。日産リーフ(乗客定員4名)各1台を旧網野町、旧久美浜町地域向けに用意し、車両購入費約800万円を国と市が補助、また運行経費の補助金として京丹後市が年間約800万円を予算計上している。つまり、形態はデマンドタクシーでありながら、公共交通としての性質が強いという位置付けだ。なお、運行は市による事業者公募に数件の応募があった中から、丹後地域で路線バスを運行する丹後海陸交通が選ばれて担当している。

 このEVタクシーは年中無休で8時30分~17時30分まで運行し、旧網野町と旧久美浜町の全域で乗車可能。電話予約に応じて配車をするフルデマンド方式で、降車は京丹後市の全域および、JR山陰線の特急停車駅のある兵庫県豊岡市の市街地で可能だ。

 運賃は1人につき500円(小学生半額)だが、旧町域の境を越えるたびに250円が加算される。つまり、たとえば旧久美浜町域内で利用する限りは500円だが、JR豊岡駅まで行く場合には250円が加算されて750円となる。また同様に、旧網野町域からJR豊岡駅まで行くなら、さらに250円が加算されて1000円となる。もっとも、網野駅から豊岡駅までの列車普通運賃も640円で、ほぼ毎時1本しか走らないから、タクシーの利便性を考えれば競争力は充分にある。

 そうした地域住民向けフルデマンド運用に加えて、網野・久美浜両駅に観光列車が到着した際の客待ちも同一の車両で行っている。網野駅に1日3本、久美浜駅に同2本、京阪神方面からの観光客を乗せてやって来る優等列車の到着に合わせて、駅前で10分間ほど待機するようにしているのだ。どちらの駅からも路線バスは出ているが、列車から接続する便がないことも多く、ふと思い立って下車した人にはこのEV乗合タクシーが貴重な足となる。

 ただ、それらすべてを旧網野町/旧久美浜町ともに1台だけの日産リーフでこなすとなると、電話をしたら先に予約が入っていた、予約しようと思ったら駅待ちの時間帯と重なって使えなかった、というような事態にはならないのだろうか?取材時に尋ねてみると、「このEVタクシーは乗合となっていますので、同一時間帯に同じ方面への予約が入った場合には擦り合わせをして、相乗りをお願いしております」(丹後海陸交通・業務課長 安達誠氏)とのこと。なるほど、予約制の利便性を逆手にとって柔軟な調整を可能にしているわけだ。

 さらに、このEV乗合タクシーの役割はそれだけではない。国土交通省による規制緩和を受けて、「ヒトの輸送サービス」のみならず、「モノ+サービスの新たな輸送サービス」をも担うことになったのだ。具体的には、「買い物代行」「図書館代行」「病院予約代行」「小荷物輸送サービス」がそれぞれ15分につき400円(ただし旧網野町/久美浜町域のみ)で利用可能で、ほかに「見守り代行」(こちらは料金別途見積もり)も設定されている。

 せっかく補助金で電気自動車(EV)を導入したのだから、乗客に加えてモノを運んだり、運転手がついでにサービスを代行したりして、最大限に有効に活用しようという発想だ。なお京丹後市のこのEVタクシーは、国交省の規制緩和が実行に移された全国初の事例である。