今や絶好調の回転寿司チェーン。しかし、2年ほど前には業界危機説がささやかれていた

 2年ほど前、「回転寿司業界に危機が来た」という報道が相次いだことがあった。もともと原価率が高く輸入食材に頼る経営構造の下で、円安ドル高が打撃になり経営が苦しいというのだ。それがどうだろう。あれから2年たってみて、いまだに回転寿司は絶好調である。

 今回のコラムでは「回転寿司業界の将来は苦しい」という根拠とされてきた5つの都市伝説を取り上げて、一つひとつ、その予測が正しいのか間違っているのかを戦略コンサルタントの視点で検証してみたい。

都市伝説1:回転寿司業界の成長は鈍化している

 業界の危機説が最初に登場したのは2013年。それまで2ケタ成長を続けてきた業界トップの「あきんどスシロー(以下、スシロー)」の売上高が2013年9月期に対前年6.5%と成長鈍化したことがきっかけだった。中でも既存店の売上が決算直前の数ヵ月でマイナスを示したことで、円安による回転寿司危機がまことしやかにささやかれるようになった。

 それから2年。最新の決算を見てもスシローの売上高は1350億円と増収ながら、その成長率は7.2%増とやはりひとけた成長にとどまっている。くら寿司が8.6%、かっぱ寿司にいたっては前年▲4.1%というマイナス成長だ。

 成長率の鈍化に加え、かつての三強の一角が崩れるところをみると、数字で見れば業界成長の鈍化は明らかなのではないか?というのが成長鈍化論であるが、この考え方には大きな見落としがある。

 それは「はま寿司」の存在である。「すき家」の親会社ゼンショーが2002年に始めたはま寿司がここ数年、急成長している。過去2年で約140店舗を出店し、現在では約400店舗とほぼスシローと肩を並べるところまできている。ゼンショーの発表するIR資料では2015年3月期では、はま寿司がほぼ売上の大半を占めるファストフードカテゴリーの売上高は1056億円まで増加した。

 つまり、新たな競争相手が出現して、それまでの3強から、業界は4強の戦いに構造が変化しているのだ。自分たちとほぼ同じ規模の競争相手が出現したのに、それでもなお着実に増収をキープしているのがスシローとくら寿司。つまり業界はむしろ大きく拡大していると言っていい。

 実はゼンショーは2007年にはスシローとかっぱ寿司双方の大株主だった。この二社を経営統合して回転寿司業界のトップになろうとしたのだが、現場の反発でその芽がついえ、二社の株式を手放した。過去の因縁があるからこそ、「はま寿司」はガチで回転寿司業界に殴りこみをかけている。成長鈍化どころか、急成長市場のパイを仁義なき戦いで奪い合っている真っ最中なのだ。