あえて沈黙してみるのもアリ?

 会話しているときに気になるのは、会話がとぎれること、つまり沈黙です。私自身、以前は沈黙が大の苦手でした。

「何か言わなければ」と思うのですが、言うべき言葉が見つからない。そうなると、「気まずいなぁ」とか「だから人と話すのはイヤなんだ」とか、さらには「やっぱり私はダメだなぁ」なんてことまで考えてしまっていました。完全な悪循環ですね。

 コーチになってからも、なかなかそれは変わりませんでした。

 クライアントに質問を投げかけてみて、相手が黙ってしまうと、「質問が悪かったのかな」とか「聞いてはいけないことだったのかな」と考えてしまって、心臓がドキドキ……。しばらくして返事が返ってくると、本当にほっとしたものです。

 なぜ沈黙がこわいのでしょうか。私が思うには、「何かを話さなければいけない」と必要以上にプレッシャーを感じてしまうから、沈黙がこわくなるのではないのでしょうか。

 でも、沈黙というものは、そんなにいけないものなのでしょうか。

 映画やテレビを見て、「沈黙」のシーンがものすごく印象的だったことはありませんか? 

 うまい役者や俳優は、セリフ回しが上手なことはもちろんですが、それ以上に「間」の演技が上手です。セリフとセリフの間に、絶妙な「間」が入ることでセリフの重みがグッと増します。

 もちろん、普段の会話でも、わざと間を空けたり、沈黙したりすることで、自分の言葉に重みを与えることができます。

 ただし、そんなふうに沈黙を効果的に使えるようになるまでには、少々高いハードルをクリアする必要があるかもしれません。でも沈黙することは必ずしも悪いことではないと思えれば、それだけでも気がラクになるでしょう。

 うまく言葉が見つからないときは、あせってはいけません。まずは気持ちをゆったりと持つこと。そして、うなずいたり、腕組みをしたり、考えているしぐさをすることで、「いま言葉を探してるんですよ」「何を話そうか考えてるんですよ」というメッセージを相手に伝えましょう。「うんうん」とか「そうですねぇ」といった短い言葉を口にしてみるのも効果的です。