事業計画書といえば、何十枚にも及ぶ書類を作成しなければいけないと思われがちだが、そんなことはない。起業して資金を調達するための事業計画書はもっと簡素でいいのだ。日本政策金融公庫に26年間勤務し、5000人以上の創業融資に携わってきた上野光夫氏が、起業のための事業計画書のポイントを紹介する。
基本は日本政策金融公庫の「創業計画書」
起業する人向けの公的な融資には、日本政策金融公庫の「創業融資」と、都道府県や市区町村が実施している「制度融資」の2種類があります。いずれも、「創業計画書」という名の事業計画書を作成して提出する必要があります。
日本政策金融公庫と制度融資の創業計画書を比べると、記入項目は制度融資のほうが多くなっていますが、大きな差異はありません。私の推測ですが、日本政策金融公庫のほうが創業融資に取り組んでいる歴史は古いので、先に創業計画書の書式をつくったものと思われます。制度融資のほうは、信用保証協会が日本政策金融公庫のものを参考にして検討したのではないかと見ています。
日本政策金融公庫の創業計画書の書き方のコツを学べば、制度融資にも対応できます。
日本政策金融公庫の創業計画書はA3サイズ横の1枚のみで、起業の事業計画書としては記入する項目が少なく、とてもシンプルです。一般的な事業計画書にある「経営理念」「事業戦略」「マーケティング計画」「市場規模」などは含まれていません。
書式がシンプルなのは、創業融資を利用しやすくするために、できるだけ簡素な様式にしたという側面があります。「自由に事業計画をつくってください」というと、かえって戸惑うので、ひな形の書式を作成したのでしょう。
起業する人を増やすことが日本経済の活性化につながるので、創業融資を増やそうという政策は昔からあります。そのためには、創業計画書の書式も書きやすくして、融資申し込みのハードルを下げたのです。