サラサラの組織――あなたの会社を気持ちいい組織に変える、七つの知恵
『サラサラの組織――あなたの会社を気持ちいい組織に変える、七つの知恵』富士ゼロックスKDI 野村恭彦・仙石太郎・荒井恭一+紺野 登+荻野進介[著]野中郁次郎+小林陽太郎[監修]定価1680円(税込)

「今年こそ、本を出しましょう」

 いつもの打合せで、紺野登さんが突然言い出した。といっても、本を出すという話題は、これまでに少なくとも5回は出ては消えを繰り返している話題だ。我々はこの話題に慣れ親しみすぎて、いつもの定番として聞き流そうとしていた。しかし今回の紺野さんは、いつもよりずっとしつこかった。翌週にはダイヤモンド社の編集者をKDIに呼び寄せて、打合せが始まっていた。

 KDIは、野中郁次郎先生と紺野さんの助言を得ながら、「知識創造経営の実践的ビジネスグループ」として2000年に生まれた組織だ。立ち上げから約9年、知識創造経営に関心を持つ、多様な業種の経営トップのスポンサーシップのもと、知識創造経営の実践と相互学習の場である「K‐コミュニティ」には、約60社が集った。このムーブメントを本にすべきだ、という声は今までも何度も上がっていた。成功事例と呼ばれるものが多数生まれてきたこともあり、いよいよ時機を得たか、と我々も腹をくくった。

主役は各社の「ナレッジリーダー」

 まず我々は、どの企業の事例を取り上げるべきかを議論した。やはり主役は、変革を仕掛け、牽引してきた「個人」である。自ら問題を提起し、仲間やスポンサーを集め、会社の改革プロジェクトを立ち上げてきた「ナレッジリーダー」の想いと志の伝わる本にしたい。今までにない「個と組織の関係性のケーススタディ」を作ろう、ということで一致した。

 全社的に企業文化を革新するための活動として、富国生命の「フコク維新」、NTTデータの「リスペクターズ」、東京海上日動システムズの「ワクワクワークスタイル委員会」。セイコーエプソンの新研究開発拠点の「イノベーションセンター」、富士フイルムの先進研究所の「融知創新プロジェクト」、そして日立ハイテクノロジーズの「知識創造の場」は、組織を超えた対話を通じてイノベーションを起こしていこうというものだ。そして現場同士をつなぐ活動として、九州電力の「ナレッジネットワーキング」、マツダの「ナレッジワンダーランド」、日産自動車 海外マーケティングの「GOMレボリューション」。KDIの数あるプロジェクトの中から、ナレッジリーダーの個性豊かなエピソードを選び、荻野進介さんによって、一つひとつ丁寧にインタビューをし直し、9つのケースが作り上げられた。

実践から得られた「七つの知恵」

 もう一つのチャレンジは、読者の企業での実践のために、個別のケースを超えた有用な具体的ノウハウを「物語」として伝えることであった。そのために、沙羅(さら)ちゃんという架空のキャラクターを生み出し、物語仕立てで、組織のサラサラ化の知恵を伝えることにした。補助的に作った4コマ漫画やイラストにも、8年間のコンサルティングの叡智をつぎ込んだ。